【ウルトラセブン|第23話|明日を捜せ】キリヤマ隊長俳優中山昭二とは?

※詳しくはYouTubeにて語っています!

ねえねえ、ウルトラおやじさん…最近のウルトラマンシリーズは観ていますか?
ちょこちょこ観てますな。
じゃあ、この人についてはわかりますよね?
え?そもそも何でスーツなの?

これは「ウルトラマンジード」の防衛組織AIB所属のゼナという登場人物です。

元ネタは「Xファイル」のFBIをオマージュしたかもしれませんな。防衛チームも変わってきているんですな。

ちなみに、ゼナはシャドー星人が、人間に化けた姿なのです。

各防衛チームに宇宙人がマスコットとして、味方につくのが最近のウルトラマンの傾向かもしれませんな。

以上、お父さんのためのニュージェネ講座コーナーでした。

じつは、このチャンネルの視聴者は30代から60代以上のお父さん世代が多いのですな。

第23話「明日を捜せ」は、未来をえがいたウルトラセブンの物語のなかでも、異色の懐かしい昭和の香りが漂う物語です。

あらすじ

街中を逃げ惑う占い師ヤスイ。キリヤマはヤスイが何者かに殺されかけたところを保護した。

ヤスイは地球防衛軍の秘密兵器開発研究所がある、03倉庫が何者かに爆発されることを予言する。しかし、隊員たちは予言を信じない。

一人キリヤマは信じたが、2度の捜索でも何も発見されなかった。

追い出されたヤスイの身を案じて、キリヤマは休みをとって単身捜査に乗り出した。

はたしてヤスイの占いは当たるのか?

 

その114 隠された昭和のノスタルジー

ストーリーはキリヤマと占い師ヤスイの醸し出す昭和のノスタルジーと、事件が発生するまで科学的裏付けのないヤスイの予言を間に受けない隊員たちの対比がうまく描かれていますな。

※詳しくはYouTubeにて語っています!

占い、予言、霊感、予感、テレパシー…科学技術の発達により蔑ろにされがちな、人間の第六感をあえてテーマにすることで第22話は、近代科学と迷信に振り回される人間をえがいたストーリーです。

きせずして03(マルサン)倉庫の「マルサン」も昭和のノスタルジーを感じるキーワードとなっているわけですな。
確かにそうですね。
元ネタは知っていますかな?

 

その115 「マルサン」と●●の元ネタわかりますか?

物語で地球防衛軍の秘密兵器開発研究所として登場する03(マルサン)倉庫の「マルサン」には元ネタがあることを知っていますか?

よく、ウルトラマンや円谷プロのイベントで売っている、昔ながらのソフトビニールに「マルサン」とありますな。

マルサンという名は、円谷の宇宙人や怪獣のおもちゃを販売していた「マルサン商会」からきているのではないか?とファンの間では言われています。

ちなみに、「マルサン」は「マルザン」と指摘されるファンもおられるのですが、ウルトラセブン放映の年1967年には、会社は「マルザン」と改名するも、生産過多で商品の在庫が増えてしまい、倒産して「ブルマァク」へと引き継がれていく歴史があるそうです。

と絶叫するシーン。その後も驚いて駆け込んだ店の亭主に話かけると同じ顔をしていたりと…

これは、我々世代には言わずもがな日本の怪談「のっぺらぼう」が元になっていますな。

 

古くは小泉八雲「貉」に由来する、怪談「のっぺらぼう」なのですが、ドリフなどのコント番組や漫画などでパロディ化され、怖さだけでなくコミカルな物語ですが…

いまの若い人には知られていないかもしれませんな。

こうした、いろんなネタをバラエティに取り入れたこの回は、南川龍という作家によって書かれているのですが、野長瀬三摩地監督のペンネームです。

 

その116 野長瀬三摩地監督とは?

野長瀬三摩地監督は東宝にて、黒澤明監督のチーフ助監督や、本多猪四郎の助監督など、その他にも名だたる大物監督の元で助監督をつとめていました。

しかし、斜陽になりつつある映画界では、監督昇進の機会がまわってこないことから、いちはやく見切りをつけて、テレビ監督に転身した経緯をもった実力も経験もあるベテランの監督です。

   

とくにウルトラセブンでは、第2話「緑の恐怖」や第3話「湖のひみつ」とクランクアップにあたる撮影初期より監督として携わっていますな。

本第23話「明日を捜せ」は、例の幻の上原正三の傑作「300年間の復讐」と2本を野長瀬監督が担当する予定でした。「マイティジャック」の撮影で多忙化していたなど、諸事情により「300年間の復讐」は断念せざるえませんでした。

【ウルトラセブン|300年間の復讐】ノンマルトが沖縄問題が嘘である理由とは?

2022年放送の「ふたりのウルトラマン」と1993年の「私が愛したウルトラセブン」には、沖縄問題をテーマに脚本を書き続けた金城哲夫のフィクションと、沖縄をテーマに作家デビューしたい上原正三の情熱、上原の祖先で沖縄の英雄「謝名親方」をとりあげた数奇な共通点があるのでした。

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代わりに「明日を捜せ」については、脚本から監督が関わり、かなり力をいれられた作品となりました。

ふと、上原や満田などの若手スタッフが気を使っていた事を考えると、「300年間の復讐」のお蔵入りは、年齢や力関係もあったかもしれないと詮索してしまいます。

その辺りも現代で考えると昭和的な人間関係があっても不思議でないかもしれませんな。

なんたって野長瀬監督はベテランですからね…キリヤマ隊長の夕日のシーンは撮影がいいと、出演者もジーンと、野長瀬監督のカメラワークを絶賛していました。

第19話「プロジェクトブルー」のように最後は「みんなで笑って大大円」のホッとしたエンディングが得意なのも野長瀬監督の作品の特徴なのかもしれませんな。

その117 キリヤマ隊長と俳優中山昭二

占い師の予言に振り回されてしまうキリヤマ隊長、自身を古い人間と自嘲するところが、役を演じる中山昭二さんの生い立ちに重なるところです。

この時のスーツは自前だったそうですな。

キリヤマ隊長を演じる俳優の中山昭二さんは、昭和3年生まれ、少年兵として太平洋戦争に出兵した経験のある、戦争経験者です。出演者たちは口々に、中山さんはお酒が入るとよく戦争の話をしたと語られます。

また食通でもあり、第14・15話の「ウルトラ警備隊西へ」では、わざわざ京都まで足を運んで、出演者・スタッフに選りすぐりの物を振る舞ったそうですな。

ドジョウの蒲焼きを食べにいったエピソードなど…隊員たちとキリヤマ隊長の間には、思い出がたくさんあるみたいですね。

特技はダンスで、俳優になる前は、バレエダンサーとしていくつも舞踏団に所属されていたそうですな。

晩年は、日光江戸村にて芸能師範として、後進の育成につとめておられていました。平成セブン「ウルトラセブン1999最終章6部作」には、出演を承諾されていましたが、残念ながら出演は叶わず、1998年に光の国へ旅立たれてしまいました。

ところで、占い師ヤスイを演じた木田三千雄さんとモロボシダンはNACという同じ事務所に所属していたそうです。

大泉洋の事務所ですな?

いえいえ、国際放映の事務所NACと言います。この事務所にはカッパおじさんでお馴染みの大村千吉さんなど、人間臭い個性的な俳優が所属しているようです。

また追々語っていきたいですな。

さて、次回は「300年間の復習」ではなく…フルハシと母の家族愛をえがいた名作「北へ還れ」です。満田かずほ監督が語る本当の母の物語は、涙なしには語れません。お楽しみに。

<参考文献一覧>
ひし美ゆり子『アンヌ今昔物語』2018年,小学館
森次晃嗣・ひし美ゆり子『ダンとアンヌとウルトラセブン』2021,小学館
白石雅彦「『ウルトラセブン』の帰還」2017年, 双葉社