リテイク版【ウルトラセブン|第9話|アンドロイド0指令】実相寺アングルは都市伝説とは?

👆YouTubeでしか語っていない部分があります👆

 

…とあるオタク系インフルエンサーがとんでもない発言をしていて…驚いたわけです。

 

それは、かなり大胆な発言ですな。

 

ウルトラセブンは圧倒的に実相寺監督以外の監督がメガホンをとっています。そもそも、「実相寺アングル」は本当に存在するのか?都市伝説ではないのか?という大胆な仮説のもと解説する試みです。

 

かなり挑戦的な話ですな。

 

第9話「アンドロイド0指令」の映像は、ウルトラセブンの映像の特徴を知れる作品なのです。

 

あらすじ

金色のブロンドヘアーの女に「あの…モロボシ隊員ですか?」とたずねられたフルハシ、悪戯心で握手したとたん電撃を受ける。

負傷したフルハシの手には不思議なブローチがあった。

アマギはワッペンに「アンドロイド0指令」という謎のメッセージがこめられている事を発見する。

謎の女の行方を追うダン・ソガの前に、「おもちゃじいさん」という不思議な老人が現れる。

同じワッペンをつけたおもちゃを子供達に配っていた。「おもちゃ…子供達…アンドロイド0指令…」謎は謎をよぶ…

 

その48 実相寺アングルは都市伝説か?

ねえねえ、ウルトラおやじさん、ウルトラセブンの監督といえば誰が思い浮かびますか?

 

やっぱり…「狙われた街」と「第四惑星の悪夢」の実相寺昭雄監督ですな。

 

確かに、実相寺監督の作品は目立ちますね…でも、実相寺昭雄が監督した回はたった4話で、そのうちの1本は欠番なので、たった3話なんですよね。

 

…思ったより作品数が少ないですな?

 

例のちゃぶ台事件によって、実相寺昭雄はセブンの現場から放送末期まで、ずっとはずれていたのです。ところが実相寺昭雄の影響があるとか言われるのは…神格化された「実相寺アングル」のせいでしょう…

 

「実相寺アングル」って何ですの?

 

「実相寺アングル」とは、極端な遠近法や逆光による影の演出を使った、ウルトラファンには有名な演出ですな…

 

もはや庵野秀明などによって、「実相寺アングル」は、日本エンタメを代表する撮影法となったわけで…なかには、「ウルトラセブン」の映像は、実相寺昭雄の影響によってつくられた…なんて豪語されてしまうのでした。

 

確かに、ウルトラセブンのカットは、全体的に影を強調した暗い映像や、ロングカットが多かったりなど、役者の表情が見えない、いまのテレビドラマの撮影ではあり得ない、「実相寺アングル」っぽい映像が多いですな。

 

なんですが逆にいえば、「実相寺アングル」すべての撮影方法が、実相寺昭雄のオリジナルではないのではないか?と思ったりするのです。ということで「アンドロイド0指令」の映像をもとに検証してみましょう…

 

その49 アンドロイド0指令は実相寺アングルか?

クライマックス、不気味な深夜のデパート、ブロンドヘアーの女を追うダン・ソガ…暗闇の中、薄明かりを頼りに追跡するシーンは、ホラーのような緊迫感がありますな。

「アンドロイド0指令」の終始、暗闇や影の映像が不気味さを演出して、団地のカットも遮蔽物の隙間から撮影するなどアングルにこだわった演出がみられます…

 

あれ?この話は、実相寺昭雄でしたかな?

 

いえいえ、「アンドロイド0指令」の監督は、みっちゃんこと満田かずほ監督の作品です。

 

みっちゃんって誰?

【ウルトラセブン|第4話|マックス号応答せよ】顔丸出しのヤバい宇宙遊泳の真相とは?

宇宙空間をウルトラセブンに、ロープで引っ張られるウルトラ警備隊員。この顎むき出しで宇宙遊泳するヤバいシーンは、これには子供でも違和感を感じてしまいます。なぜ、こんなヤバいカットになってしまったのか、制作の裏側で起きていた事を解説していきます。

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という方は、詳しくはこちらの動画をご覧ください。満田かずほは、ウルトラセブンのメイン監督であり14本もの作品を監督しています。代表作に伝説の最終回「史上最大の作戦」があり、実相寺監督から、満田監督は電話で「すごくよかった」とほめてもらって、うれしかったと言っておられますね。

 

そういえば、誰もが知っているダンがアンヌに告白する、最終回の名場面は逆光の黒いシルエットでしたな…これはまさに…

クライマックスのデパート以外にも、冒頭部分の謎の女との遭遇シーン…おもちゃじいさんのアジト…暗い影が強調されていますね。また、おもちゃじいさんが団地でおもちゃを売っている団地のシーンでも、わざわざ、カメラと登場人物の間に遮蔽物がありますね。

 

こんなシーンは、いまのテレビでは観ませんな…撮影方法としては「実相寺アングル」のセオリーに似ていますな…

 

ある監督によればウルトラセブンのスタッフ達は、完成した映像をテレビではなくて、映画スクリーンで観ていたので、と答えられています。

 

なるほど、テレビというより映画向けの撮影をしていたのですかな?

 

映画を撮ってるつもりだったとハッキリ言われていますね。もともと、ウルトラQでは、通常のフィルムの2倍サイズもある、35mmの映画用フィルムを使っていました。かつて、「西部警察」、「太陽にほえろ!」の石原プロは同じサイズのフィルムを使い、テレビ映画とよばれていました。同様に、円谷プロもテレビ映画として撮影をしていました。しかし、予算の都合で初代マン、セブンは16mmの通常フィルムとなりました。

 

その50 じつはセブンよりウルトラQの方が●●だった?

 

フィルムのサイズって何が変わるのですか?

 

画質の問題です。じつは、ウルトラセブンよりもウルトラQの方が、画質が良かったのです…当然、フィルムの値段も高額だったようですが…

 

え…カラーで新しいセブンより、白黒のウルトラQの画質がいいとは意外ですな…

 

おやじさんウルトラセブンが、BS4Kにてリマスター放送されたのを覚えていますか?

話題となりましたな。

 

じつはウルトラQに比べて、ウルトラセブンの4K映像化は難しいと言われていました。

 

なぜですか?

 

ウルトラセブン4Kリマスター版は…セブンの撮影された本物のフィルムをコンピュータースキャンして、映像を高品質化する史上初の試みでした。ところが、ウルトラQの35mmに対して、セブンの16mm ネガフィルムではサイズが小さすぎて、フィルムの細かな粒子まで拡大されて、さらにデジタル処理をしないといけないくらい大変な作業だったようです。

 

じつは、プロジェクトX的な、歴史に残る偉業だったのですな…

 

その通りです。セブンの映像の特徴である暗闇や逆光…そしてウルトラ警備隊のカラーであるグレーは…4Kに調整は難しかったそうです。

 

ということは、暗闇と逆光はセブンに共通した映像なのですな…

 

逆光ひとつにしても、セブンの巨大化を短いワンカットで表現するのによく使われたりします…

 

ああ…実相寺アングルって結局なんなの?

 

その51 実相寺アングルの定義とは?

 

実相寺作品の演出をすべて「実相寺アングル」と定義づけてしまうと、本当にセブンの世界は、実相寺アングルと言われかねないですな。

 

厳密に何が「実相寺アングル」であってそうじゃないのか…第8話「狙われた街」と第9話「アンドロイド0指令」で映像を比較して…考えてみましょうか…

 

まず、よく「実相寺アングル」の典型として語られる…カメラの前にわざと物があるというのは…第9話にもありますな。

「実相寺アングル」では、画面の約8割が目隠しで2割の隙間で役者を映す、役者の表情が見えづらい、ふつうドラマ撮影ではあり得ない撮り方が有名です。他の監督に、「実相寺は、この隙間から撮りたがるだろう…」と言われるくらい、実相寺の持ち味だったとされますが…意外と全ての映像がそれとは限らず、一瞬のカットだけだったりします…

 

どちらかといえば、樋口真嗣の「シン・ウルトラマン」の方が極端に多くこの演出を用いているような気がしますな。

「実相寺アングル」を継承した庵野秀明・樋口真嗣両氏は、本家実相寺のそれとはまた違っているかもしれませんね。どちらかといえば、実相寺昭雄の映像世界では、影と暗闇、そして極端な顔のアップと遠近法がよく使われていますね。

 

「狙われた街」での、メディカルセンターの影演出は有名ですな。作戦室もまるで灯火管制がしかれているような真っ暗い状態は、「第四惑星の悪夢」「円盤が来た」がありますな。

 

暗闇の演出は「アンドロイド0指令」にも共通していますね。

 

暗闇の演出はセブンの映像全体で多いですな。

 

ただし、実相寺昭雄の暗闇や逆光の演出の場合は、役者の表情が見えづらい影法師の演出が特徴的ですね。この点、「アンドロイド0指令」は流石に役者の表情にライトがあたっていますね。

 

映像がリマスターされたおかげか、まったく表情が見えないわけではないですが…当時のアナログ画質では、顔が真っ黒に潰れてしまっていたかもしれませんな…

 

それでも、役者には悲哀や喜び、緊張など感情豊かな演出をさせて、アップで抜いていますね。この点は、庵野・樋口の政治の話を淡々とする無機質で表情のない「実相寺アングル」の演出とは違いますね。

 

つまり、庵野・樋口の「シン・シリーズ」の「実相寺アングル」は本家の実相寺昭雄とは、暖簾分けのような違いがあるのかもしれませんな。

 

結局、実相寺昭雄の特殊な映像演出は、実相寺作品にしかなくて、もっと言えば、実相寺作品の全体が特殊な「実相寺アングル」で撮られていないという事なのです。そして、実相寺昭雄が好む暗闇の演出がたまたま、ウルトラセブンの映像に多く用いられているだけで、実相寺昭雄が影響を与えたとは言えないという事です。

 

まあ、初期に2本撮影した後は京都に出向していたわけですからな。

 

では、監督たちで話し合って…同じような陰影の強い映像に統一してそろえようとしたのですかな?

 

いえいえ、「アンドロイド0指令」の満田監督は次のように説明しています。

 

監督によってライティングは違っていましたよ。僕たちは映画を撮っているつもりだったし、スクリーンで試写を見ているので、陰影が強くなりがちだった。フィルムの特性ってのもあったけどね。でもテレビ局は、できるだけフラットな映像を求めてくるわけ。それで、結果的にトーンが似てきてしまったのかもしれない

 

監督同士で会議とか打ち合わせは無かったので、逆に撮ったもん勝ちで、競い合って撮っていたようですね。なので、それぞれの作品で監督の個性が光っていたようです。

 

その53 セブンのカラー撮影は●●だった?

 

カラー映像を撮影するのは、現代でいうとこの3D映像やVR映像を撮影するように、未知の領域で、かつ難しかったのです。セブンのとある監督はこう振り返ります。

 

※詳しくはYouTubeにて語っています!

 

初代マン、セブンを撮影した60年代のカラーフィルムは感度が悪く、ロケで屋外で撮影するにしてもライトを強く当てないと、鮮やかな映像が撮れず、それどころか色が潰れてしまうくらい、めんどくさくいものでした。

 

それを聞くと、セブンが暗闇の映像を多く撮影したのは、かなり挑戦的な事のように思えますな。

 

初代マンに比べると、セブンの頃には、スタッフもカラー撮影にかなり慣れてきたようです。ただ、あざとい色は避けようという事になって、夕陽のオレンジくらいしかきれいな色が撮れなかったそうです。

夕陽といえば…「狙われた街」と「遊星より愛をこめて」が思い浮かびますな…

「ウルトラ警備隊西へ」と「明日を捜せ」もお忘れなく…夕陽と見せかけて朝日だったりもします。といっても、フィルターをかけたり、ソフトフォーカスを使ったり実験的な映像を撮っています。

 

リアタイ視聴者によれば、セブン放映時は、まだ白黒テレビが主流だったようですな。それなのに、陰影や色合いを意識して映像を撮っていて驚きですな。

 

という事で、ウルトラセブンの映像を中心に語って終わってしまいましたな。

 

「アンドロイド0指令」本編やアンドロイドゼロを演じた小林夕岐子さんについては、過去動画で語っていますので、ぜひそちらもご覧ください。次回は、「怪しい隣人」のリテイクでは、セブンのアイスラッガーとイカルス星人の謎について語って参りますのでお楽しみに!