【ウルトラセブン|300年間の復讐】ノンマルトが沖縄問題が嘘である理由とは?

※YouTubeでしか語っていない部分があります

6月23日沖縄慰霊の日を迎えました。

沖縄返還50周年記念作品として「ふたりのウルトラマン」が放映され、改めて、金城哲夫・上原正三、2人の沖縄出身の作家がウルトラマンの礎をつくった事により、ウルトラマンの世界観には沖縄の郷土文化が大きく影響を受けている事が周知されました。

「ふたりのウルトラマン」と沖縄の関係は別動画にて解説していますので、そちらもご覧ください。

●●ドラマだった「ふたりのウルトラマン」とは?

「ふたりのウルトラマン」に登場する金城哲夫と上原正三をはじめとする人物像にクエスチョンを感じた方はきっと多いはず…それもそのはず、これはN●Kが得意とする「●●ドラマ」なのです。円谷一、飯島敏宏、実相寺昭雄などの監督たちのキャラは、●●なのです…

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とはいえ、「ウルトラセブンの第42話「ノンマルトの使者」は沖縄問題を書いた金城哲夫の傑作の社会派ドラマである」、という誤った解釈が世間一般にまことしやかに語られています。

「ノンマルトの使者」については、セブンの製作スタッフから金城氏はそんな意図でシナリオを書いていないと否定されながらも、間違った解釈をメディアが取り上げ、いまだにブログで書かれてしまっている問題があります…

庵野秀明は「シン・ウルトラマン」でウルトラセブンをオマージュする!?

「シン・ウルトラマン」のテーマは、初代マンのネロンガ・ガボラの登場によって、エネルギー問題といわれたり、「シン・ゴジラ」に引き続き原発問題をテーマにすると言われたりしています。ところが、それらは制作サイドに巧妙に仕組まれたミスリードなのです。

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「ノンマルトの使者」について詳しくは、追々語るとして…今回は同じ沖縄出身の上原氏が反対に沖縄問題をダイレクトにえがいた、セブン本編では未使用でありながら、その完成度の高さから、いまだに多くのファンに愛される、幻のシナリオ…ウルトラセブン「300年間の復讐」について、以下のように語りたいと思います。

 

物語のあらすじ

物語はアンヌの独白からはじまる。アンヌはロッククライミングの特別訓練の最中、山の天候が崩れたことで、モロボシダンやウルトラ警備隊の仲間とはぐれてしまったのだ。

アンヌは山の中をさまよっていると、謎の甲冑人間に襲われた。ウルトラガンで応戦するものの、攻撃が効かないことから逃走する。すると古びた洋館にたどり着いた。

そのまま、倒れ込んでしまったアンヌは、館に住む赤髪のトーク星人によって匿われた。

アンヌを見たトーク星人は「シシー」と呟いた。疲労と発熱により衰弱していたアンヌをトーク星人は夜通し看病した。

朝になって、アンヌは意識を取り戻すと服を着替えさせられている事に気づく。アンヌは館の中を探索していると、地下から聞こえる機械音に誘われる。地下室の隙間から部屋を覗くと、トーク星人が何かのマシンを作っていた。

トーク星人から伸びる影を、アンヌは見た。なんと恐ろしい悪鬼の形をしていた。おもわず驚いたアンヌ、そこへ後ろから…

詳しくはYouTubeにて語っています!

それから、アンヌはモロボシダンによって救出される。その際に、地下の研究室にあった一冊のノートを持ち出した。

解析により、トーク星人の日記であることが判明した。

トーク星人は300年前に、自分達の星とよく似た地球と交流のため訪れた。ところが驚くことに、地球人同士、武器を振り回し56し合いをしていたのだ。トーク星人は山奥に平和郷をつくりひっそりと暮らす事にした。しかし、地球人たちは「髪の色が赤い」という事だけで、トーク星人たちに襲いかかってきたのであった。

トーク星人は3000年も前に武器を廃絶してしまったので、無抵抗なまま、皆56しにされてしまった。

一人生き残ったトーク星人は…

「300年かけてトーク星の武器を復活させて、地球人のまるでおもちゃのような武器では、想像し難い恐ろしい武器を見せつけてやる!」

という復讐の炎を燃やしている事がトーク星人の日記に書かれており、キリヤマ隊長は脅威に感じた。

トーク星の未知なる武器に対抗すべく、ウルトラ警備隊は「超兵器8」で対抗をするべく出撃した!

「シシーを連れ去らないでくれ。」

「彼女はシシーではない。」

「いや、シシーにちがいない。こっちへおいでシシー。」

(※私が愛したウルトラセブンより)

超兵器8の射程がトーク星人を捉え砲撃がはじまった…燃え盛る炎の中でトーク星人は断末魔をあげ、アンヌが地下室でみた怨念のような影が具現化して「悪鬼」となって、巨大化して暴れ回る。ダンはウルトラセブンに変身して、戦いを挑むもセブンの攻撃が通じないどころか、身動きすら封じられてしまう。

アンヌの語りかけによって、悪鬼は動きが止まり、セブンはその隙にエメリウム光線を放ち悪鬼は元のトーク星人の姿に戻る…それをみてアンヌは涙を流しつつ、トーク星人の笛を吹く…

この話の結末…見覚えありませんか?奇しくもウルトラマンティガ第27話「オビコを見た」のラストに似てますね。個人的な感想なのですが…

仮説1 傑作「300年間の復讐」が幻となった残念な理由

「ふたりのウルトラマン」にもえがかれているように、1967年は沖縄はアメリカの占領下にあり、東京に行くにもパスポートが必要な時代でした。

上京した上原が呟いた「大和人(やまとんちゅ)」という言葉…上原は無抵抗に侵略を受けた沖縄の暗い歴史と、日本人の差別や偏見に対する怒りをテーマにドラマを書きたかったのでした。

トーク星人が地球に訪れた「300年」前は、江戸時代初期にあたり、まさに「薩摩藩(現在の鹿児島県)による琉球王国侵略(沖縄侵略)」の行われた時代をズバリと指しているので、「私が愛したウルトラセブン」などでは、「我々、大和人に対する挑戦状ですか?」と言われ、「こんなもの放送できませんよ。怨念むき出しじゃないですか?」とボツをくらってしまうシーンがあったりします。

「私が愛したウルトラセブン」はあくまで市川森一の書いた一部フィクションを含むドキュメンタリードラマであって、それが真実というわけではなく、「300年間の復讐」が未映像化となってしまった理由は、諸説ありまして…

①トーク星人、甲冑人間、悪鬼の3体の予算がない説

②トーク星人から悪鬼が現れる表現が困難だった説

などがファンの間で語られていました…

近年では、当時のスタッフのスケジュール帳から、新番組「マイティジャック」の撮影準備のためにスタッフの再編成がはかられ、野長瀬三摩地監督の予定があわず、「300年間の復讐」、「明日を捜せ」と2本の撮影予定が、泣く泣く一本となってしまった経緯が語られたりもしています。

いずれにせよ、上原作品では上位にあたる完成度であり、しかも子ども番組で人種差別をテーマとした画期的な作品でした。

ちなみにですが、甲冑人間のアイデアは、その後、ボーグ星人の姿として起用されたのは、コアなファンの方々には有名な話であります。

 

仮説2 上原正三がウルトラで書きたかった沖縄と差別の問題

「ふたりのウルトラマン」にて、沖縄に帰郷した金城哲夫から上原正三に、『上原、おまえの祖先にあたる「謝名親方(じゃなうぇーかた)の脚本」を書いていいか?』と電話で尋ねられます…「わかった。でも金城、もう夜中だから…」と上原は少し冷たくあしらってしまう様子でしたが…。金城の「謝名親方」の演技指導は、何かに取り憑かれたように鬼気迫るものを感じる名シーンでした。

「謝名親方」とは、服従を迫る薩摩藩に最期まで徹底抗戦した沖縄(琉球王国)の英雄です。

 

奇しくも「私が愛したウルトラセブン」、「ふたりのウルトラマン」は、共通して上原の祖先「謝名親方」を劇中にてとりあげていますな。

太平洋戦争で、唯一日本本土陸上によって大多数の犠牲者のでた沖縄戦、日本の敗戦後は占領と基地化と悲しい歴史をたどります…歴史を遡ること300年前、平和郷だった琉球王国は、薩摩軍の鉄砲によって無抵抗に侵略をされ、その後も日本のために虐げられてきた歴史がありました。

ウルトラセブン第9話「アンドロイド0指令」にて解説したように、上原正三は、デビュー以来、沖縄問題をモチーフとしてずっと物語を書き続けています。

【ウルトラセブン|第9話|アンドロイド0指令】「ふたりのウルトラマン」上原正三デビュー作でダンの暴行事件とは?

2022年3月26日某国民的テレビ局のBS4Kにて、ウルトラマンの制作ドキュメンタリードラマが久しぶりに放送されました。主人公となる金城哲夫と上原正三、沖縄出身の2人の脚本家は、昭和ウルトラシリーズの産みの親です。上原正三のデビュー作とは?

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しかし、「300年間の復讐」は未映像化となってしまったことで、沖縄問題をダイレクトに問題提起したドラマは、残念ながらセブンでは叶いませんでした…

上原正三のおもいが世に伝わる作品となったのは、メインライターとして携わった「帰ってきたウルトラマン」の第33話「怪獣使いと少年」でした。

「怪獣使いと少年」については、すでに多く語り尽くされているので、物語のあらすじや放送後に上原氏に起きた出来事についての詳しい説明は、はぶきますが…70年代の暗い社会問題から差別をドラマ化した事で、賛否両論がまき起こってしまうのでした。

 

個人的には、庶民派ドラマを求められた第2期ウルトラシリーズと比べ、侵略者と戦う非日常的なSFドラマを書いたウルトラセブンならば、オブラートに包まれて、そこまでネガティブな意見はでなかったのでは?と思うのですが…推察に過ぎません。

きせずして、ウルトラセブンが名作と言われる所以は、なにもSFブームによるものだけでなく、ナショナリズムや民族問題を感じる社会派な物語を裏メッセージとして発信した作品が多いからです。

そんな中、不朽の名作「ノンマルトの使者」が、あたかも沖縄問題を風刺した作品とされたわけですが…何度も言います。間違いなんです。

沖縄問題を作品化した物語は、幻となってしまったのでした。

 

仮説3 本作がファンに語り継がれる●●な理由

物語の完成度のみならず、「300年間の復讐」が語り継がれるのは、欠番回第12話にならぶ、アンヌ主役回だからなのです。

ウルトラセブン2クール以降、レギュラーであるウルトラ警備隊隊員の1人が中心となって、物語が進む主役回が存在しました。

キリヤマ隊長は「明日を探せ」、フルハシは「北へ還れ!」、ソガは「必さつの0.1秒」、アマギは「700キロを突っ走れ!」…など、厳密には準主役回的なものもあるわけですが…

さて、アンヌの場合…アンヌの親戚や友人が事件に巻き込まれる準主役的な物語はありつつも、アンヌが中心となって進むストーリーは、幻となってしまったのでした。

ウルトラマンシリーズの中でも指折りの人気を誇る、アンヌの主役回となるはずだった「300年間の復讐」…キャスティングでは、「地底へGO!GO!GO!」の薩摩次郎役を森次晃嗣が一人二役演じたのと同じく、「シシー」をひし美ゆり子が一人二役するはずでした…

なので、「私が愛したウルトラセブン」など本編とかんけいなく各種媒体において一部映像化が試みられる現象が起こって、本未使用シナリオの存在を知らずドラマを観て、「え?こんな回あったっけ?」と私はなってしまいました…。

 

ところで、ふと思ったのですが…「地底へGO!GO!GO!」にてモロボシダンのモデルとなったされる青年、薩摩次郎の薩摩は、脚本を書いた上原正三が考え、あえてつけたのでしょうか…?

と、深読みさせ、監督の円谷一さんが名付け親なのかもしれないですな。

さて、今回は沖縄慰霊・沖縄返還50周年を兼ねて、ウルトラセブン「300年間の復讐」について語ってまいりましたが、いかがだったでしょうか?

残念ながら、限られた資料のみで語ることになってしまったので、詳しい情報をお持ちの方は、YouTubeのコメント欄にご記入ください。

詳しくはYouTubeにて語っています!

さて、「300年間の復讐」の決定稿が書きあがったのと、同時期にさつえいされたのは、第19話「プロジェクト・ブルー」でした。最近、水曜更新では、なにかと横道に逸れますが、次回はセブン本編について語ってまいります…