注意ポイント
※この記事では、映画「シン・ウルトラマン」、「平成セブン」、「セブンX」など、若干のネタバレを含みますので、あくまで作品をご覧になった方に、向けてつくったものです。ご承知ください。


セブンファンでなく、シンウルトラマンの「マルチバース」についてのハテナを解決したい方にも、ウルトラセブンの歴史をもとに考えると分かりやすいです。

はてな
「ウルトラマンレオ」で防衛チームMACの隊長モロボシダンは、突然基地ごと怪獣に食べられちゃって、その後どうなったの?
平成に復活した、「平成セブン」の物語は、他の平成ウルトラマンシリーズやウルトラ兄弟と関係あるの?

ウルトラセブンの歴史を理解するには、円谷プロの「マルチバース」設定を周知しておかなければなりません。

- 「ウルトラセブン」本編終了
- 「ウルトラファイト」に登場
- ウルトラ兄弟としてのセブンで客演登場
- 「ウルトラマンレオ」のMAC隊長として出演
- 日本テレビ「ウルトラセブン太陽エネルギー作戦」放送
- ビデオ版「ウルトラセブン」の最終章はじまる
- 「ウルトラマンメビウス」客演登場
- 「ウルトラセブンX」でまさかの展開
- 「ウルトラマンゼロ」の父として登場

ウルトラセブン本編を離れて、先行的に1967年に放映されたウルトラセブンの本編と、その後に続くセブンのパラレルワールド問題を分かりやすくざっくり解説してまいります。
レベル0 マルチバースって何?

昭和のウルトラシリーズを中心に観てきた世代にとって、この「マルチバース」という言葉は馴染みのない言葉かもしれません。
といっても、「シンウルトラマン」は多くの昭和ウルトラ好きな方が期待をして、映画館に足繁く通われたはず?
この「マルチバース」は円谷プロの公式設定なのです。「マルチバース」の意味を知りたいだけの方はレベル5から観てくださいね。
レベル1 ウルトラ兄弟としてのウルトラセブン
「西の空に明けの明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んでいく それが僕なんだよ……」
モロボシダン
1968年「ウルトラセブン」の感動の最終回終了後…

はじめは、現在でいう特撮シーンの切り抜き番組でしたが、放送時間の問題により、途中よりセブンと怪獣が野外でプロレス風に闘う、新規撮影の映像が放送されました。
「ウルトラファイト」の人気と同時に、「ウルトラセブン」は再放送された事によって、セブンへの再評価と、子供達からの人気が再燃したのか、「帰ってきたウルトラマン」では、ウルトラ兄弟という設定はないものの、ベムスターに敗北した新マンにウルトラブレスレットを授けるために再登場します。
「ウルトラマンエース」より、公式にウルトラ●兄弟という設定がサブタイトル、劇中で用いられるようになって以降は、「ウルトラマンタロウ」も含めてセブンは兄弟のなかでも、出演回数は断トツに多く見られます。


「帰ってきたウルトラマン」第38話「ウルトラの星光る時」では、ウルトラ警備隊の服を着たモロボシダンが登場します。また、初代マンも科特隊の服を着たハヤタとして登場するので、初代マン→セブン→新マンの世界の連続性が読み取れます。
レベル2 「ウルトラマンレオ」のモロボシダン隊長
「ウルトラマンレオ」MACの隊長として、地球に帰還したウルトラセブン。ところが、レオの初期の企画段階では、決まっていたのは俳優森次晃嗣のスピンオフ出演でした。
ウルトラセブンがレギュラー出演する事になったのは、これまでも、「帰ってきたウルトラマン」、「ウルトラマンタロウ」と…セブンの人間体であるモロボシダンとして出演してきた、森次晃嗣ご本人の願いによるものでした。
とはいえ、セブンがレギュラーとなってしまうと、主役であるはずの「ウルトラマンレオ」が闘う意味が薄れてくるので、第1話で怪獣軍団に敗れて、変身能力を失ってしまうという設定が組まれたのでした。
さて、「ウルトラマンレオ」には、ウルトラセブンファンにとって名作回として、「運命の再会!ダンとアンヌ」という、アンヌ役のひし美ゆり子さんが、アンヌそっくりな女性として登場する回があります。
ここで、モロボシダン隊長は、
「また地球に住むことになって、まず第一に君をたずねた。しかし君はいなかった。誰も君の行方を知らなかった…。」
モロボシダン隊長
ウルトラ警備隊の隊員達のなかで、真っ先にアンヌに会いに行ったが会えなかったと劇中のセリフがあります。
しかし…
「私は、アンヌじゃありません。アンヌじゃないんです」
アンヌに似た女
とあきらかに正体を明かせない訳ありなアンヌの姿に、地球を去った後のダンとアンヌの関係性をメロドラマ風に書いた傑作回でありました。

ところがどっこい、モロボシダン隊長は、円盤生物「シルバーブルーメ」によって、他の隊員もろとも食べられてしまうという、悲劇的な最期を迎えてしまいます。


レベル3 平成版「ウルトラセブン」で産まれた矛盾

これは、NHKの「私が愛したウルトラセブン」の反響による、ウルトラセブンの復活を熱望した、ファンの声に応えるかたちで実現したものです。
旧隊員たちのその後の姿がえがかれます。フルハシは隊長に昇格して現場指揮をとります。アンヌはウルトラ警備隊を除隊して、結婚して「ダン」と名づけた息子がいました。
ウルトラセブンは、ピット星人の攻撃によるものか?他の侵略宇宙人との戦いによるものか?エネルギーを失い意識のない状態で地球防衛軍に匿われていました。

確かに、地球を防衛する任務をおっていたMACは全滅して、モロボシダンは巻き込まれて、行方不明ではありましたが、だからといって、ウルトラ警備隊と旧式となったウルトラホーク1号が再建されるのか?という問題が起きてしまいます。




さらに、OVA版(ビデオ作品)になれば、かつての「ウルトラセブン」で登場して、うやむやとなっていた「ノンマルト」や「ペガッサ星人」たちの物語が重要なキーとなって、序盤ではウルトラ警備隊にフルハシ長官を筆頭に、多数の殉職者が出るなど、レオ顔負けのめちゃくちゃヘビーな作品になってきます。
作品の雰囲気はともかく、1967年のウルトラセブンの世界を忠実に続編として書いた作品が、平成につくられた「ウルトラセブン」の物語なのです。
レベル4 「ティガ」の誕生と「セブンX」
平成版の「ウルトラセブン」がビデオ化され、私を含めた昭和ファンが熱中しているのと同時期、テレビでは再びウルトラマンが復活します。
平成のウルトラマンシリーズ…「ウルトラマンティガ」は、それまで「ウルトラマン80」まで続く、昭和ウルトラシリーズの連続性を感じさせない、M78星雲との関係性がない、新規怪獣オンリーの作品です。
その後も、「ウルトラマンダイナ」、「ウルトラマンガイア」と…
昭和のウルトラマンの世界から、完全に独立した世界の作品が続いていくのです。この辺には、当時の円谷プロを取り巻く大人の事情があるとか…ないとか…
この昭和のウルトラマンと平成のウルトラマンの関係は、ファン達にもやもやが募っていくわけですが…
そこにきて「ウルトラセブン」の世界にも大きな衝撃が訪れます…それが「ULTRA SEVEN X」の誕生です。
姿形はウルトラセブンに似ているようで、強面の姿をした謎のセブンX…この物語のクライマックスで、ウルトラセブンの平行世界の存在が明らかとなってきます。


とはいっても、ティガには、満田かずほや実相寺昭雄、上原正三といった旧スタッフのみならず、村石監督など、セブンにリスペクトを大変感じる作品であります。平成版「ウルトラセブン」の出演者が多く出ているのも特徴でしょうか…
レベル5 原点回帰の「メビウス」と「ウルトラ8兄弟」
ダンとアンヌも登場して、これぞ「マルチバース」!というわかりやすいウルトラマンの映画を紹介します…
監督しました映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」の興業収入第1位の記録を新作「シンウルトラマン」が更新したそうですね。じつはまだ見れていないのですが期待です。
そして「超ウルトラ8兄弟」はいつまでも大切な作品です。みなさんいつもありがとうございます。
どうぞ楽しんでくださいね! pic.twitter.com/anEbPH2Pky— Takeshi Yagi ・八木毅 (@reima7x) May 16, 2022

M78ワールドとは別世界の物語が続いた平成ウルトラマンシリーズも原点回帰の流れとなり…ついに「ウルトラマンメビウス」において、モロボシダンとして復活をはたします。
メビウスの防衛チーム「GUYS」は昭和ウルトラシリーズの世界を正統に継承している設定がなされ、当然MACも存在しており、虚無僧の姿をしたウルトラマンレオこと「おおとりげん」やモロボシダンの最後のセリフに、MAC全滅に対する回収を感じるわけで…ぜひ本編を観てもらいたいです。


ウルトラマンメビウスはテレビ版で、昭和ウルトラマンシリーズでうやむやとなった物語の回収を積極的に行なっていくわけですが…映画版にて、とんでもないことになってくるわけです。
メビウスが主役となる映画には2つあって、一つ目の「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」ではこれまで断絶していたウルトラ兄弟との繋がりの復活が明確となった、昭和ファンにとってうれしいストーリーでしたが…
二つ目の「大決戦!超ウルトラ8兄弟」では、ダンとアンヌ、森次晃嗣、ひし美ゆり子のみならず、桜井浩子をはじめとしたウルトラマンシリーズのヒロインが総出演するという、ウルトラファンの妄想のような物語をえがいてくれたとんでもない映画です。
しかし、ここに登場するウルトラマンの人間体とおぼしき人々は、あくまで一般人なのです。
ウルトラマンもテレビで放送されていた架空の物語なのです。それが、本物の怪獣が現れ、ウルトラマンメビウスが現れたことで覚醒して、モロボシダンもウルトラセブンに変身するという、これぞ「マルチバース」!という物語なのです。
ところで、忘れてはならないのは、このメビウスの前に「ウルトラマンマックス」というシリーズがあり、モロボシダン役の森次晃嗣さんは、考古学者として登場します。そして、実相寺昭雄監督が直々にメガホンをとり「狙われない街」という、セブン第8話「狙われた街」の続編がつくられます。
マックス自身はM78星雲人でありセブンの出自を匂わせ、変身の仕方もぐんぐんカットではないなど、セブンのリスペクトの大きな作品です。

まとめ 円谷プロの「マルチバース」とは?

ということで、セブンの歴史を中心に説明してきましたが…
ドラえもんなどを観てきた、我々昭和世代にとって、馴染み深い言葉としては「パラレルワールド」という、並行世界を表す言葉の意味の方が理解しやすいかもしれません。
「マルチバース」とは量子力学の学術用語で、たんに「マルチ(多数)」の「ユニバース(宇宙)」をつなげた言葉で、この世界には我々地球と同じ星のある、そっくりな宇宙「並行宇宙」が多数存在しているという意味です。
「並行世界(パラレルワールド)」とほぼ同じ意味の言葉なのですが、ウルトラマンの世界は、異次元人ヤプールのような、異次元からの侵略者の存在があるため、あえてそこは「並行宇宙」という表現を用いたのでしょうか?
じつは、「マルチバース」は、現在新作シリーズとして制作されている、ニュージェネレーションのファンにはお馴染みの言葉になりつつあるのです。
「マルチバース」の初見は、ウルトラセブンの息子である「ウルトラマンゼロ」が主演の映画「ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」です…


2021年よりサービスが開始された、ウルトライマジネーションという円谷プロ公式の動画配信サービスの中にも、マルチバース世界を暗示させます…

※TUBURAYA IMAGINATIONより引用
つまり、ウルトラマンシリーズのそれぞれの宇宙(世界)は、別なんだよと公式に円谷プロは明示する事で、逆にこれまで別物とされていた昭和と平成のウルトラマンをつなげていく狙いがみられます。
