

ウルトラセブンは放送より記念55年目となりました。
すでに語り尽くされたように言われますが、2017年以降よりアンヌ隊員役のひし美ゆり子さんのおかげで新たな資料や証言が出てきました。
あらたに一話ずつ語ってまいります❤️
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あらすじ
頻繁に発生する人間蒸発事件を宇宙人の仕業と断定した地球防衛軍は、精鋭チーム“ウルトラ警備隊”に出動を要請する。早速、捜査を開始したフルハシ隊員とソガ隊員の前に突如現れ、警告を発する謎の風来坊。彼はモロボシ・ダンと名乗り、宇宙人を迎撃するために有効な作戦を提案した。果たして、彼の正体は?
円谷プロHPより


その1 ウルトラ「マン」セブンという誤解

最近、とあるバズり動画のせいで、世間には「ウルトラマンセブン」という間違った名前が広まっています。しかし、他のウルトラマンとはちがって、唯一セブンだけが「マン」のつかないウルトラマンなのです。
ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンと、シリーズに共通して、「ウルトラ」という言葉が使われています。「ウルトラマン」というキャラが強いせいで、「ウルトラマンシリーズ」と思われがちですが、公式には「ウルトラシリーズ」と言います(※1)。
(※1)昭和初期の制作段階では、円谷プロはウルトラシリーズと言ってました。ところが2010年代に入ると、公式にはウルトラマンシリーズと呼称するようになったという情報があります。命名の経緯ということで捉えていただきたいです。

また、「ウルトラセブン」という名前は、企画段階では、「ウルトラアイ」とされていました。その名残として、セブンは変身のために使うアイテムの名前にはウルトラアイ、必殺技の頭の鶏冠を刀として使う技をアイスラッガーと呼びます。
さらに、第1話の台本には「レッドマン」という別名前が印字されています。当時、産業スパイが横行して、名前を勝手に商標登録されてしまい、権利を盗まれてしまうという事件が起こっていたので、放送までウルトラセブンの名前は、公には機密とされていた事は有名です。
「ウルトラセブン」は「帰ってきたウルトラマン」以降、「ウルトラ兄弟」として客演登場して弟のウルトラマンのピンチを助けます。


「ウルトラ兄弟」との共闘や他のシリーズに客演することから、セブンの「ウルトラマン」としての認識がとても強いです。人気が高い「ウルトラマン」がゆえにセブンは「ウルトラマンセブン」という誤った名前で、多くの人に言われることが多いです。
また、「ウルトラセブン」は、ウルトラマンシリーズの中でも、カルト的な人気を誇るため、特別に平成に入って日本テレビのスペシャルにはじまり、OVA作品と、いわゆる「平成セブン」といわれる物語の続編がつくられます…



その2 アンヌ隊員の年齢は非公開?
ウルトラセブンの記念すべき第1話「姿なき挑戦者」のはじまりです。
「地球は狙われている!今…、宇宙にただよう幾千の星から、恐るべき侵略の魔の手が…」(浦野光のナレーション)
浦野光氏の語るナレーションともに、夜の街走る車のライトが星のように輝きながら、クールなファーストショットともにはじまります。
その後、山の上で回転する巨大なレーダー塔が映ります。地球防衛軍極東基地です。
ウルトラセブンの防衛チームの拠点は、初代マンの科学特捜隊基地とちがって、場所を知られないように擬態した秘密基地なのです。
基地が富士の樹海の地下深くに建造されているため、建物全体を移せないのです。代わりに基地の象徴として、巨大なレーダー塔がよく映ります。
シーンは基地内部にうつり、登場人物の紹介がはじまります。
キリヤマ隊長
年齢38歳。隊歴16年、東京都出身。

ソガ隊員
年齢25歳。隊歴3年、九州出身。

フルハシ隊員
年齢29歳。隊歴7年、北海道出身。地球防衛軍きっての怪力の持ち主。

アマギ隊員
年齢24歳。隊歴2年、名古屋出身。名プランナー。

[st-kaiwa1r]プランナーってもう4後になってきているけど、現代で言うとこのプログラマーとかエンジニアという事ですね。[/st-kaiwa1]
アマギ隊員が持っている紙テープ。ストックティッカーと言って、この頃のSFとか特撮にはよく出てきます。
1870年から1970年ごろまで使用されていて、本当は株価情報を送受信するために使われた、最も初期の通信媒体なのです。
友里アンヌ隊員
年齢…いや、こりゃ失礼…。隊歴2年、東京都出身。ウルトラ警備隊の紅一点。
アンヌ隊員の年齢は非公開なのですが、役者のひしみゆり子さんは東宝ニュータレント第6期生として、デビューしたばかりの新人でした。
ちなみに、この後に登場するモロボシダン役の森次晃嗣さんも、デビューしたばかりの新人の俳優でした。前作「ウルトラマン」がベテランの俳優ばかりに対して、セブンでは主人公とヒロインに新人俳優を起用しました。
その3 ウルトラセブンヒロイン交代事件
アンヌ隊員役のひしみゆり子さんは、ウルトラヒロインの中でも抜き出た人気の高い女優さんです。しかし、もともとアンヌ隊員の役は、別人だったというのはファンの間でも有名な話です。
よく、誤解されるのは、交通事故により予定されていた女優さんが怪我をして、急遽ひしみゆり子さんが役を務める事になったというエピソードです。
それは誤った都市伝説的なものです。後に、市川森一氏が脚本を書いた、ウルトラセブン製作のドキュメンタリーをドラマ化した「私が愛したウルトラセブン」にて、脚色された事で誤解を受けがちなエピソードの一つです。
ちなみに、すべてがフィクションではなく、後の「ウルトラマンエース」で、本当に事故でヒロインの役者さんが交代する事件があったのです。
ウルトラセブンのヒロイン交代の事実はちがいます。アンヌ隊員をやるはずだった女優の豊浦美子さんは、急な映画の出演が決まり、降板する事になったのが、ウルトラセブンのヒロイン交代の真相です。
なので、アンヌ隊員の役を急にする事になったひしみゆり子さん。しかし、ウルトラ警備隊のユニホームは豊浦美子さんのサイズに作られていたので、ひしみゆり子さんには、小さ過ぎてたのです。


その4 ウルトラの正体はジェームズディーン!?
参謀本部より謎の失踪事件の調査を開始するよう命令を受け、動き出したウルトラ警備隊。フルハシとソガを乗せたポインターが出動します。
パトロール中のポインターの行く手を阻むように、道の真ん中に青年が立ちはだかる。黄色いジャンパーに緑のTシャツ、ジーンズ姿。そう、モロボシダンの初登場シーンです。
モロボシダン役こと森次晃嗣さんによれば、この初登場の衣装は、ジェームズディーンのイメージがあったそうです。
ジェームズディーンといえば…ウルトラマンのスーツアクターで、ウルトラセブンではアマギ隊員役をつとめる。古谷敏さんは、ジェームズディーンの熱狂的な信者で、ウルトラマンのポーズはジェームズディーンに由来していると、古谷敏さんはよく語られます。
このあと見えない宇宙船からの攻撃を受けます。モロボシダンの目が光って、透視する超能力で宇宙船を見つけます。ダンが透視する描写は、第2話では緑色に目が光るのですが、円谷英二氏より、「気持ち悪い」という一言を受け、目がキラキラと光る演出に変えられたそうです。


その5 どうやって宇宙人は浮いているの?
第1話の敵はクール星人は、地味であっさりとアイスラッガーでやられてしまうので、あんまり印象に残りにくい宇宙人です。しかし、これまでの円谷の怪獣や宇宙人とちがう、まったく新しい技術が用いられたキャラクターです。
円谷英二監督は、黒澤明や小津安二郎よりも世界で名の知れた監督でした。それはCG技術のまったくない時代、アメリカのGHQに、戦争映画の特撮場面を実写映像と勘違いされるだけの高い技術力でした。セブンには円谷英二の関わりも強く、特撮技術はより進歩を遂げていくのでした。
これらの特撮技術は現代ではオーパーツ化してきており、逆にCGでなくては再現できなくなってきております。斬新なアイデアとして、着ぐるみではなく、マリオネットのように、ピアノ線により演技をさせる怪獣や宇宙人が登場してきます。これらの特撮技術は現代ではオーパーツ化してきており、逆にCGでなくては再現できなくなってきております。
また、ウルトラセブンの痺れる特撮シーンといえば、ウルトラホークの発進シーンです。これは、イギリスのサンダーバードの影響でした。円谷英二は、イギリスにまで行ってサンダーバードのスタジオを視察して、帰国後に徹底したミニチュア撮影をスタッフに指示しました。
ちなみに、ウルトラホークが発射台まで移動する際の、「フォース・ゲート・オープン」のイマージェンシーコールは俳優や声優ではなく、みっちゃんこと監督の満田かずほさんの声というのはコアなファンには有名な話です。
その6 第1話は重要シーンが丸々カット!
「この回では、唯一ジャンプしながら変身する。ウルトラ・アイは飛んできて目に装着されるが、これはどこから飛んできたのか、真相は不明だ」(森次晃嗣)
ダンこと森次晃嗣さんはいろいろと言及されておりますが、けっこう第1話では気になる部分があるのです。
まず、ウルトラセブンの名前はいつ登場したのか問題についてです。セブンの名前は、次回第2話「緑の恐怖」にてアンヌ隊員の「ウルトラセブンがんばってー!」にて、ようやく披露されます。
ウルトラセブンの「セブン」とは、ウルトラ警備隊の隊員人数が6名なので、7番目の隊員ということで、彼を「セブン」と呼ぶ事にしようという展開があったとされます。
ところが、CMを合わせて、放送時間30分の時間尺に収めないといけない事から、丸々カットされてしまったとの事です。
次に、ダンのウルトラ警備隊員への突然入隊です。第1話のはじめに説明があるように、ウルトラ警備隊とは300名近くいる地球防衛軍のなかでも、選りすぐりのエリート組織なのです。
多くのひらの防衛隊員の中から、参謀本部の推薦とはいえ、突然採用されるのはやっかみを受けるよ、無理があるよ。つい先日YouTubeにて、森次氏自身が語られております。
番組初期の段階では、ダンはポインターの運転手という仕事で、活躍を重ねて隊員に出世していくという、芸人のようなサクセスストーリーが構想としてありました。

しかたなく、風来坊として登場させ、最初から正隊員とするという設定がとられたのでした。
それでも、「僕は地球防衛軍の隊員として、生きていくのがいいのか、悪いのか…」という葛藤の場面があったそうです。しかし、それも泣く泣くカットされ、ウルトラセブン命名のやりとりだけでなく、物語を説明する主な場面が大幅にカットされてしまったそうです。

こうした、未公開映像やNGシーンは、稀にフィルムが発見される事があります。これから先、ノンカットバージョンを公開してもらいたいですね。
<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「セブンセブンセブン アンヌ再び…」2001,小学館
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館
森次晃嗣「ダン モロボシダンの名をかりて」1987,扶桑社