【ウルトラセブン|第13 話|V3から来た男】最後の志願兵キリヤマとは?

2022年5月24日

※YouTubeでしか語っていない部分があります

第二次世界大戦が終結して、77年あまりが経ちました…多くの戦争経験者達の生の声や証言が失われつつあり、記憶が風化するとともに世界では、再び大きな戦争が起こってしまいました。

ウルトラセブンは、太平洋戦争が終結して、まだ20年少々たったばかりの作品です。出演者やスタッフには戦争を知る世代も多く、セブンの社会派のドラマに影響を与えた事は前回の欠番回の中で語った通りです。

今回は出演者の語る戦争についてのお話しです。キリヤマ隊長役の中山昭二さんは、戦争末期に少年兵として志願した時の事を、よく出演者に話をしたそうです。

 

あらすじ

地球時間24:06、宇宙ステーションV3は正体不明の飛行物体を発見した。

すぐさまV3より、ステーションホーク3機が緊急発進した。

激戦の末、クラタ隊長以下の隊員たちは、行方不明となってしまう。

キリヤマ隊長は士官学校の同期であり、戦友でもあるクラタの訃報を耳にして、肩を落とした。

しかし、クラタは生きていた…

クラタとキリヤマの夢のコンビネーション攻撃が、強敵アイロス星人を追い詰める…

そして、ついにセブンの最終奥義が炸裂する!

 

その65 キリヤマ・クラタ隊長出撃!伝説の航空戦!

「キリヤマ…、久しぶりに組んでやるか」

(クラタ) 

「よし、…よかろう」

(キリヤマ)

第13話は、キリヤマとクラタ地球防衛軍の隊長2人、歴戦の勇士が息阿吽の呼吸で、熟練されたウルトラホーク1号と3号のコンビネーション攻撃に、漢心をくすぐられる胸が熱くなる展開の回であります。

第11話に続く熱い男の友情物語でありますな。

防衛チームの超兵器の攻撃シーンは、演出次第でヘタをすれば、マンネリ化の恐れがあります。それとは裏腹に、ウルトラセブンでは、ウルトラホークによる空中戦は、回を重ねる事に特撮技術が洗練がみられます。

特撮スタッフの試行錯誤とこだわりの努力が伝わります。

ウルトラホークは1号、3号(2号もともに)、小型のものと大型のものと、模型がそれぞれあり、いわずもがなピアノ線で飛んでいるように見せる、操演の技術の賜物です。

ピアノ線が少しでも見えてしまうと撮り直しをして、うまくいくまでリテイクを重ねました。

ホーク1号・3号の主力武器は、はじめはレーザー光線でしたが、徐々に実弾が用いられるようになりました。劇中では「ミサイル」と表現されます。

しかし、初代マンのジェットビートルの通常装備の単発式ミサイル、とはちがって、連射式に発射されるので、機銃もしくは多連装ロケット砲なのでしょうか?

第2期ウルトラシリーズでは、ミサイル→レーザー攻撃と怪獣の特性を見極め、攻撃の段階分けがパターン化されていました。

セブンの場合は、特撮監督と予算など、大人の事情に大きく左右されるのですかな?

詳しくはYouTubeにて語っています!

 

その66 ウルトラホークのミサイル(曳光弾)って何?

ウルトラマンや怪獣映画などを観たことはある方は、一度は目にした事があるミサイルの一斉射撃シーン…

 

ところがどっこい、この怪獣めがけて飛んでいく、光の球の正体を知らない方は多いはず?私も花火のようなものと思っていましたが、これは実際の戦場でも使われている、曳光弾と呼ばれる、光る弾丸なのです。

曳光弾は、ウルトラシリーズの特撮場面では、宇宙船や怪獣へのミサイルなど、実弾砲の攻撃をわかりやすく可視化するため、用いられ発射されているものです。

実際の戦争では、湾岸戦争の時に、夜空に弾丸が飛び交う映像が世界中に流れたのは、印象に残っている方は多いのではないでしょうか。夜間銃撃をする際に、銃弾の飛ぶ方角を確かめるために、銃弾の中に目に見える弾が込められています。それが曳光弾です。

飛行機や戦車の攻撃に限らず、バルタン星人の手から発射されたり、怪獣やウルトラマンの技にも曳光弾が使われ、あえて本物の火の明かりを見せる事で、レーザー光線のような光学合成とはちがったよさが演出されます。

ところが、かなりの食わせものです…

 

その67 最後の●●経験者俳優キリヤマとクラタ

キリヤマ隊長こと中山昭ニさんは、お酒が入るとよく戦争の話をしました。中山さんは最後の志願兵だったそうです。(※1)

中山昭ニさんは、昭和3年生まれで戦争に行った話ができる最後の世代です…

ゲスト出演されているクラタ隊長役の、南廣さんも戦争を知る世代の俳優です。

両隊長ともに第二次世界大戦下、現実に戦場を駆け抜けてきた経験をもつ俳優なのです。

 

「…クラタ!…この悪党!」

キリヤマ

 

「おう、モグラめ、元気か!?」

クラタ

 

軍人としての口調や動作、経験からこれだけリアルな演技ができる人は、もういまとなってはいませんな。

ところで、マナベ参謀とキリヤマ隊長との会話から、地球防衛軍には、士官学校を経て入隊した経緯がわかります。

クラタ隊長は、マナベ参謀との会話や態度から、過去に何か失態をおかして、司令部の鼻つまみ者として、ステーションV3に更迭されたような経緯を察するシーンでもあります。

台本にはかつてアイロス星人の円盤群を深追いして、部隊を全滅させてしまった責任を負わされ、マナベ参謀よりV3に左遷された事実が述べられるシーンがあったとか…なかったとか…

ん?それって第35話「月世界の戦慄」に似ていないですかな?物語のふくせんという事ではありませんか?

宇宙ステーションV3の隊員はイシグロ隊員やミズノ隊員など、これまで何人か登場してきました…しかし、クラタ隊長は、アウトローで癖の強い性格ゆえに人気もあって、セミレギュラーとして最終回にもゲスト出演するまでのキャラクターとなりました。

第35話のザンパ星人が第13話のアイロス星人の伏線であったのではないか説は、かなりコアなセブンファンの間で気になる部分ではありますが…

 

その68 鳥か?怪獣か?宇宙人か?強敵アイロス星人の謎

外見は鳥に似て、電気ショックや怪光線を放ち、ウルトラセブンの必殺技のアイスラッガーやエメリウム光線が通用しない、強力な生命体です。

しかも、アイロス星人の操縦士する宇宙船は宇宙ステーションV3のステーションホーク1号のほぼすべて撃破して、地球の大気圏内に侵入をはたしたかと思えば、ウルトラホーク1号までも撃破する、パイロットとしての技術力の高さを見せます…

しかもフルハシ・アマギを拉致して、そっくりの偽物を防衛軍基地に潜入させ、固形燃料を奪わせようとします。

モロボシダンの手により防がれたものの、人質を盾にしてキリヤマ隊長に燃料を渡す要求をのませ、燃料だけをいただいて、約束を破って攻撃をしかけるという、卑劣で狡猾な性格がうかがえる宇宙人です。

見た目は宇宙人というより怪獣なのですが…怪獣図鑑には宇宙超人アイロス星人とあり、宇宙人であることがわかります。

アイロス星人自身でなく、配下の怪獣であると言う説を書いている書籍もあるなど、諸説ありますが…

いずれにしても、ウルトラ警備隊だけでなく、セブンもピンチに立たされます…

しかしながら、ワイドショットという、エメリウム光線以上の、ウルトラマンのスペシウ光線を超えた、大火力の大技を見せつけます。この、ワイドショットは意外と謎が多いわけですが…

 

その69 宇宙ステーションV3の知られざる話

ウルトラセブンには、宇宙ステーションV3は度々物語に、事件の足がかりとして登場をしてきます。

そもそも、盛んぼること「ウルトラセブン」が誕生する前の当初の企画においては、ウルトラマンのような巨大なヒーローが戦うストーリーは考えられておらず、主役は「ウルトラ警備隊」であったのです。

さらに、ウルトラ警備隊の基地は富士山麓の山中の秘密基地ではなく、当時の宇宙ブームから、地球とコロニーのある火星の中間地点に建設された宇宙ステーション「マザー」にあって、太陽系警察の特別機動捜査隊の役目を持っている企画でした。宇宙ステーションV3はその名残であります。

しかも作家金城哲夫は、新しいメカを登場させセブンの世界観を広げるシーンの用意するため、宇宙ステーションV3は、ウルトラ警備隊の宇宙での本部と言う設定が組まれました。

ところが、ご承知の通り、地球防衛軍極東基地が管轄する宇宙ステーションと言うことになりました。とはいえ、当初の企画のように、その後V3を足がかりに宇宙空間、あるいは月世界等でのウルトラ警備隊の活躍は描かれていくことになります。

ところで、セブンの製作におおきく影響を及ぼしたとされる…イギリスの「サンダーバード」について思い起こしてみれば、何か事件の前触れに、サンダーバード5号からの連絡が入りますよね。円谷とサンダーバードの因縁については、第17話「地底GO!GO!GO!」にて語っていきたいと思います…

 

<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「セブンセブンセブン アンヌ再び…」2001,小学館
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館