【ウルトラセブン|第16話|闇に光る目】幻の第1話となったヤバい理由とは?

「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」と…日本のエンタメは怪獣文化、特撮文化の原点回帰の流れとなりつつある2022年現代…

初代マンに続く、ウルトラセブンは、番組製作直前まで、敵は何者であるか?はては、「宇宙人と●●」と戦う正義のヒーローとして、番組予告をされていました。

ウルトラマンシリーズやウルトラ兄弟というのは、「ウルトラマンA」からの設定なのです。

セブンは、当初は「ウルトラQ」をも超える、大人向けのハードSF路線が予定されていました。ウルトラマンとは違う世界観を創作したい作家たちと、テレビ局側との情熱が名作をつくったわけです。

頭脳だけの宇宙人「アンノン星人」は、セブンの物語を象徴する、幻の第1話となるはずでした。

 

あらすじ

アンノン星調査のため、宇宙開発局の打ち上げた無人ロケットサクラ9号は、3ヶ月間消息を経っていた。

しかし、とつぜん地球に戻ってきたのだ。駆けつけたウルトラ警備隊の目の前で、ロケットは爆発してしまう。

モロボシダンは辺りに奇妙な気配を感じる。同じ頃、弱虫ヒロシというアダ名の少年は、地獄谷で不思議な石を拾う。

ヒロシ少年役には、怪獣殿下でお馴染みのキュートな稲吉千春くんが再出演!はたして、闇に光る目の正体とは?

 

その79 幻のセブン第1話「石に泣いた」

第16話「闇に光る目」は、「ウルトラセブン」の番組企画当初、「石が泣いた」というタイトルで、「ウルトラセブン」の第1話になるはずでした。

「闇に光る目」の物語の特徴としては、セブンにはめずらしい、少年を中心にストーリーが展開するところです。

作家の藤川圭介は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」を代表とする70年代のSFアニメブームを牽引した脚本家です。

 

ちなみにですが、「闇に光る目」アンノン星人を演じたのは、「宇宙戦艦ヤマト」のタラン将軍の声優矢田耕司と言われ、藤川桂介とのヤマトつながりを取り上げられたりしますが…じつは誤りで、正確なアンノン星人の声は仮面ライダーやバラエティ番組「学校へ行こう!」のナレーションでお馴染みの中江真司さんです。

 

藤川氏によれば、セブン第1話ということで、ウルトラマンでやっていた世界とは違う、ハードな世界観を作っていこうと思って原案「石が泣いた」を書こうとしたようです。

ウルトラマンはやや幼児向けに書かれていたので、次は対象年齢をひき上げていきたいおもいが、藤川とともに、メインライター金城哲夫にはありました。

ところが、藤川氏が思っていた現場の雰囲気は違っていたそうです。金城哲夫氏は、初代「ウルトラマン」制作時は、テレビ局に金城のアイデアや意見をどんどん通すことができていました。

 

「石が泣いた」が「闇に光る目」として、2クール目にまで、まわされてしまったいきさつは、テレビ局側の意向によるものであったのか、金城とテレビ局の関係は厳しい状況であったのかどうか、いまとなっては定かではありません。

ところで、第16話の鈴木俊継監督は、藤川圭介と第30話「栄光は誰れのために」を作る事となる名コンビであることは、また追々語る事としていきましょう。

 

その80 ウルトラセブンの幻の番組予告

ウルトラセブンの番組企画は、これまでも解説をしてきましたが、放送直前まで方向性に迷いがありました。それがよくわかるのが、「キャプテンウルトラ」の最終回で流れた、新番組紹介ナレーションです。

 

※詳しくはYouTubeにて語っています!

セブンの敵は宇宙から侵略する宇宙人です。とはいえ、怪獣ブームの全盛期時代、宇宙人だけではインパクトが弱いので、妖怪という非科学的で、番組に似つかわしくない言葉が使われてしまっていました。

ちょうどこの時期、水木しげるの「墓場の鬼太郎」が「週刊少年マガジン」に同時掲載されていました。怪奇や幻想の流行を取り入れようとした狙いもあったのかもしれないとされているわけですが…。

 

確かなことは、ウルトラセブンの次に、円谷プロは同じタケダアワーにて「怪奇大作戦」を製作しました。

もしかすると、ウルトラセブンはゲゲゲの鬼太郎、妖怪人間ベムのように、この世の者とならざる者と戦う物語になったのかもしれません。

第33話「侵略する死者たち」は、宇宙人に操られた死者と戦う、異色のストーリーのアイデアは、もしかしたらここにあるかもしれませんな。

ウルトラでは、「ウルトラマンエース」より、「怪奇シリーズ」というテーマで、鬼や妖怪のような存在が怪獣(超獣)を操る物語にはじまり、平成シリーズの「ウルトラマンティガ」では、炎魔人「キリエロイド」や魔神「エノメナ」という、ファンタジーの要素をもつ敵が現れるようになってくるわけですが…

 

ちなみに、「ベム」とはなにも妖怪を指す言葉ではなく、れっきとしたSF用語であり、初代マンよりウルトラシリーズと関係深い言葉なのです。

 

その81 「ベム」とは?アンノン星人の正体は?

ウルトラセブンの番組企画書には、金城哲夫による「『ベム』とは?」という説明が書いてあります。

企画書では…

「最近の子供たちが好む怪獣を調べると、はっきりと1つの傾向があることを発見したのです。それはベムです。「ベム」とは、SF用語で、宇宙からきた未知の生物を指しますが、このすぐれた頭脳や武器、珍しい形態を持って登場する未来の怪物たちに、圧倒的な拍手と声援がわき起こるのです。」

金城哲夫

と書いてあります。

ウルトラシリーズで「ベム」といえば、初代マン、第1話「ウルトラ作戦第1号」に登場する宇宙怪獣「ベムラー」が思い出されますな…。

我々、幼少期にウルトラマンシリーズを見て育った世代にとって「怪獣」とは、恐竜のような親しみやすいキャラクターであります。ですが、もともとは「ゴジラ」のような、異形の者、巨大な怪物を指す言葉であり、「怪獣」と「妖怪」はさほど性格は変わらないのです。

「ウルトラQ」の物語に登場したホラー要素の強い「怪獣」たちが、まさに象徴しています。それをウルトラマンは、より子供向けに親しみやすく、Qよりスピンオフした「怪獣」も、ガラモンからピグモンのように愛らしくしあげた作品のように思います。

 

ウルトラセブンでは、「怪獣」ものを売りにするのでなく、敵対する生物のSF設定のレベルアップを試み、「闇に光る目」のような、石の身体をかりなければ実体化できない、頭脳だけの宇宙人「アンノン星人」という画期的なアイデアが誕生したのではないでしょうか?

 

その82 セブン初のナイトバトル

「闇に光る目」の特撮は、円谷英二監督にも好評でした。とつぜん、現れる緑色の光の目玉は、森次晃嗣氏は、合成ではなく仕掛けを置いたのでは?と述懐しており、黄色いスモークの中に光る目が浮かび上がるシーンは、「闇に光る目」のなかでもとくに印象的です。

助監督やスタッフが発煙筒をもって走り回り、黄色いスモークをたく一方で、本物の火山の硫黄が漂って煙たい中、風の様子をみながら、苦労して撮影したそうです。

第16話は、はじめて夜に巨大化したセブンが敵と戦う、夜戦が繰り広げられた回です。初代マンで、何度もナイトシーンでの撮影を経験した古谷敏さんによれば、ナイトシーンの格闘シーンはスーツアクターの視界からは、目が光っていることから周りが見えづらく、危険を度々感じることがあったそうです。

初代マンのナイトシーンは都市部での戦いを描いていたのに、対して「闇に光る目」の場面は、真っ暗な山奥で、アンノンとセブンの目の光が浮かぶ、真っ暗闇な中での戦いが印象的です。暗さを補うように、ホーク1号だけでなくアンノンは、曳光弾による攻撃をおこない、光を指す演出のように感じました。

ところで、ウルトラセブンの特撮にこだわりが感じられるのが、セブンの巨大化するカット、通称ウルトラでは「ぐんぐんカット」とよばれますが、前第15話までは

 

その83 約束を守るアンノンじつは●●

アンノンとセブンは目からビームを撃ち合い、文字通り火花を散らすバッチバッチの戦いを繰り広げ、両者の戦いはほぼ互角でした。ストップ光線で、アンノンの動きを止めたセブンは、アンノンと会話をはじめます…

 

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前回の第15話「ウルトラ警備隊西へ(後編)」にて、地球人への誤解を解くため、モロボシダンはぺダン星人と同じような会話をしました。しかし、ぺダン星人はモロボシダン、セブンとの約束をあっさりと裏切ってしまいました。それからすると、セブンの説得に素直にアンノンは応じるように地球を去ったようにみえます。

アンノンは、ヒロシ少年をそそのかすように、実体化するための石を地獄谷に運ばせますが、巨大化した後は山奥で暴れるのみで、劇中で誰かが犠牲となっていません。ヒロシ少年は事件に巻き込まれて気の毒ではありますが、アンノンは意外と紳士的な性格の宇宙人かもしれません。

足が短くはうように動く、キュートな姿をかわいく感じてしまいますな。

「調査」を「侵略」と誤解する事件のきっかけは、前回と重なってしまうわけですが、「闇に光る目」はタイトル通り、闇の中に光る目がおどろおどろしく出てくる怪奇的な演出の一方で、子供を中心にストーリーが進む、セブンにはめずらしいお話でした。

最近、何かと「シンウルトラマン」の影響から、特別編を作ったりしていますが…本編にせんねんしていけるようにしていきたいと思います。