【ウルトラセブン|第27話|サイボーグ作戦】幻となったバッドエンドとは?

2022年9月25日

※YouTubeでしか語っていない部分があります!

ねえねえ、ウルトラおやじさん…ウルトラセブンの実際に使われた台本っていまいくらの値段になるか知っています?
野暮な事を聞いてきますな。プレミアな事は確かでしょうな。
全49話と未使用シナリオあわせて55冊あるのですが、最低落札価格がなんと450万円…
ひええええええ

https://mainichi.jp/graphs/20220707/mpj/00m/040/058000f/1

博物館級の値段なのです。まあ55周年も経てば、もはや歴史的史料としての価値がついてくるのは必然ですね。なかでも、放送で使われなかった未使用シナリオと呼ばれる、幻となった話の脚本はプレミアがついています。

このチャンネルでも「300年間の復讐」のような未使用シナリオを取り上げた事もありましたな。

今回も、残念なことに映像化しなかった、幻のシナリオを紹介します。「サイボーグ作戦」では、ハッピーエンドでしたが、サイボーグとして改造されたのに、どうして野川はもとの人間として幸せに暮らしていけるのか…

確かに、違和感がありますな。

じつは台本を見ると、もっと面白い内容の物語であった事がわかりましたので、紹介したいと思います。

 

あらすじ

ソガの友人であり、地球防衛軍の通信隊員野川は、婚約者のサナエを連れてアサヒ沼をドライブしていた。

ところが、湖から表れた宇宙船に野川は拉致されてしまった。

野川はボーグ星人により、サイボーグにされてしまう…。

 

その133 登場宇宙人はボーグ星人ではなかった?

ウルトラセブンの宇宙人や怪物は、後に怪獣図鑑のなかで名前が後づけされたり、詳しい設定がつけたされたりと、本編終了後に紆余曲折する事がよくあったのはご存じですか?

キングジョーとか、●●●星人とかありますな。

そのせいで、いまでいう炎上が起こって、作品が2度と観れなくなったとかなかったとか…あえて言及しませんが。

そのパターンとは違って、ボーグ星人は台本と本編で、名前は違っています。もともと脚本では、ザンバ星人でした。

あれ?ザンバ星人ってあの?

いえ、それはザンパ星人ですね。いずれにしても、沖縄出身のセブンのメインライター金城哲夫が名前を着けたという事がわかりますね。

どういう事ですか?

ザンバ、ザンパは、沖縄の残波岬という名所の地名に由来するといわれます。

そういえば、「残波」という泡盛がありますな。

さすが親父ですね。他にもチブル星人は、沖縄の方言で「チブル」は頭を意味するからだそうです。

第27話は台本と撮影された本編とは、大きく内容変更があった作品なのですが、詳しくは終わりに語ります。

 

その134 一般隊員にいじられるソガの秘密

詳しくはYouTubeにて語っています!

ソガ隊員は、本当は初代ウルトラマンのイデ隊員のように、3枚目のおもしろキャラとして、初期設定が組まれていました。ところが、ソガを演じる阿知波信介さんは、2枚目の演技をしてしまいがちだったそうです。

メイン監督としてシリーズ全体をまとめていた満田かずほや、ソガとよくコンビを組んでいたダンこと森次晃嗣さんは、彼の演技は2.5枚目と苦笑いして振り返ります。

必殺の0.1秒の演技は完全に2の線でしたな。制作側も折れてしまったのですかな?

まあ、そうでもなく、3クール以降、フルハシとのかけ合いでは、けっこうおどけた感じを見せていたりもしますよ。

どちらかというと、フルハシが3枚目に見えてしまいますな。

詳しくは言いませんが、撮影裏での毒蝮さんのおふざけが本編にも映ってしまったのかもしれませんね。そこに●●がくだったようなエピソードがあります…

その135 ウルトラ警備隊北へ(営業)フルハシ凍4する!?

アンヌを演じるひし美ゆり子さんによれば、出番の少ない回だったと振り返ります。じつは、北海道の小樽に営業に行っていたそうです。

特殊任務というわけですか?
現実の話ですよ。有名な北海道の雪まつりにゲストとして、パレードに参加したんですよ。

ウルトラセブンと一緒に怪獣と戦っていますね…アンパンチならぬアンヌパンチですか?

積もっている雪からわかる通り、この回の撮影は、1968年の1月末から2月始めだったそうです。

1年のうちで一番寒い時期じゃないですか…

アンヌは、遠方で極寒の北海道に2人だけしか営業に行かないと不満だったそうですが…お酒にご馳走…最高の思い出になったそうですね。

ところで、フルハシがアクアラングを着て潜るシーンがあったのには覚えていますか…?

野川を捜索するために、フルハシが湖に潜るシーンがありましたな。

何気ないシーンですが、何度も言いますが撮影は極寒の2月…フルハシを演じる毒蝮三太夫さんは、冷たーい湖に潜らされ氏にそうな思いをした、無謀な撮影をいまだに苦い思い出として語ることがあります。

なぜ、わざわざ潜らせたんでしょうな?お灸をすえるため?

あまりの寒さに旅館の風呂に直行したそうです。まあ、フルハシのエピソードは追々話ます。

 

その136 エ●い隠れた昭和

婚約者サナエを演じたのは宮内恵子さん。後に、牧れいと改名され、「緊急指令10-4・10-10」「レッドバロン」などにも出演しています。か弱き婚約者を演じてますが、バリバリにアクションができる強い俳優さんです。

頭に被っているスカーフが時代を感じますな。

これは真知子巻きという、1953年放映の映画「君の名は」で爆発的に流行った昭和を代表する伝説のファッションです。

エリザベス女王もしていたり、世界的にもはやっていたのですな。

ラストシーンで教会での結婚式をあげて、ライスシャワーを浴びて、ブーケとすをするのは、変わらないシーンですな。

最後には、カンカンをいっぱいつけたオープンカーで走っていくシーン。ブライダルカーとも言われますが、昭和のアニメでよくみたりしましたが、あまり見なくなりましたか?

あれ?ウルトラマンティガでもこんなシーンなかったかな?あの時はどうだったかな…

物語はハッピーエンドとなったのですが、じつは台本では、どちらかというとバッドエンドだったのは、この後語ります。

ところで、スカーフといえばサイボーグ009や仮面ライダー…石ノ森章太郎ですな?

 

その137 日本エンタメのサイボーグの歴史

ウルトラオヤジさんは、サイボーグと聞いたら…何を思い浮かべますか?
うーん、「サイボーグ009」、「仮面ライダー」…石ノ森章太郎のキャラを思い浮かべますな。
やっぱりそうですね。しかし、若い人には、「サイボーグ」は馴染みがなくなってきているかもしれませんね。

「攻殻機動隊」のTVアニメも放送されて、15年以上経ってしまいましたな。

え、ちょっとそれはショックですね。

ウルトラセブンの世代では、1968年にTVアニメ化された「サイボーグ009」が思い入れ深いかもしれませんな。

その後、70年代に放送された「仮面ライダー」はウルトラの永遠のライバルとなりましたね。

仮面ライダーシリーズは、平成以降、長期にわたって放送が続く人気作ですね、いまでこそ、子供向けにポップで明るい作品ですが、もともとはホラー作品で 、生々しい改造手術のシーンからはじまる、子供向けとは信じられない作品なんですよね。

主人公は、悪の秘密結社に拉致されてしまい、改造手術を施される。しかし、体はマシーンにされても、脳や精神が犯される前に逃げられたので、復讐のために戦うという流れが初期の仮面ライダーでした。

これは、学生運動が盛んだった時代、就職した途端に社会に迎合してしまった、サラリーマンたちをショッカーとして揶揄して、はみ出た存在として仮面ライダーを書いたとか、書いてないとか…

それにしても、サイボーグとして改造された野川は、なぜ最後に何もなかったかのように終わったんでしょうな?

まあ、そこの違和感もあったり、この回の作品全体のつくりに対する評価は、辛口になりがちなのですが、それには理由がありまして…

 

その138 バッドエンドからハッピーエンド

脚本を書いた藤川桂介氏は「気持ちが乗らなかった」と振り返っているように、あまり納得のいく作品ではなかったそうです。

以前、第16話にて解説したように、金城哲夫とTBSの不協和音に原因がある事を話しましたな…

藤川桂介が書いていたシナリオ「半人間」は視聴者が期待するような味のあるストーリーでした。

藤川桂介「半人間」

近親婚を繰り返し、衰えていた民族ザンバ星人は、地球人と結婚させる計略をたていいたが失敗する。その代わり、事故により命を落としかけていた野川を捕まえ、自分たちの手足にするためにサイボーグに改造した。

野川は妻サナエの前現れ、「氏んでくれ」首をしめる、アマギに見つかり、麻酔銃を撃たれるが効かず逃走する。

まもなく、丸の内最大の第28ビルの守衛が次々に転がされる事件が起こる。犯人は野川だった。ウルトラ警備隊に確保された野川は、メディカルセンターに運び込まれた。

医師からは、野川がサイボーグ人間であること、体内に爆発装置が組み込まれていることをキリヤマに報告する。しかも、野川は元の人間には戻れないのだ。

野川は正気に戻り、第28ビルにプレート爆弾をとりつけ、サラリーマンが出勤と同時に爆発すると告げる。

プレート爆弾の解除するフルハシ、ソガはビルに閉じ込められ、ダンはウルトラセブンに変身した。セブンの前に老人をしたザンバ星人が現れる。ザンバ星人は自分達の企みを話しはじめる。

「氏にそうな人間をサイボーグとして蘇らせ、地球を支配させるのだ。やがて地球は、ザンバ星と呼ばれるようになるのだ!」

その後、ウルトラ警備隊とウルトラセブンの活躍により事件は解決した。ところが…

「人類として、はじめての貴重な体験をした野川は、サイボーグの生き証人として、宇宙ステーションで働いてもらうことになった。」

野川はサイボーグ人間として宇宙で働かされることになり、妻サナエと別れることとなった。野川はアマギに、妻サナエに別れの手紙を渡すようにお願いをする。手紙を読んだサナエは悲しみにくれる。

本編と違って重いストーリーですな。

「どうか、事故だけは、例え小さな事故でも起こさないでください。第2のザンバ星人があなたの生命が危うくなるのを待っているの知れないのですから…」

交通事故による4傷者が多く「交通戦争」とよばれた時代、昭和ウルトラでも、交通事故の問題はよく題材とされていますな。

ちなみに、幻のシナリオでは、冒頭でザンバ星人の計略で、謎の少女ミスティにソガが惚れてしまうという展開がありました。ミスティはザンバ星人の娘で、少女は仮の姿で、正体は老衰したザンバ星人で、老婆のような姿で現れます。危うく撃ち56されかけたソガをダンが救うのですが、それによりザンバ星人の地球人結婚計画は白紙となるという…

次回の「700キロを突っ走れ」では、恐竜戦車のデザインをめぐる問題、ウルトラマン産みの親の退社など、シリーズ後半での気になるエポックを解説していこうと思います。

それよりも、気になるのは冒頭部分のダンとアンヌのデートシーンですな。

それについても語ってまいりますので。お楽しみに。