【ウルトラセブン|第14話|ウルトラ警備隊西へ(前編)】キングジョーのきをつけピンッ!の理由とは?

2022年5月29日

※YouTubeでしか語っていない部分があります

ウルトラセブンには、侵略者や黒幕が明らかにされない物語もあったり、登場してもシルエットのみで、実際の姿が見えない、謎の宇宙人の存在が多いです。

50年の半世紀がたった令和に、まさかの姿をお披露目された宇宙人もいます。そしてウルトラマンZとトリガーに登場した、不動の人気を誇るロボット怪獣キングジョーが登場します。

ウルトラセブンも2クール目に入り、お正月に放送を迎え、スペシャル企画として、スポンサーである武田薬品の本社工場がある関西ロケが行われました。

今回の「ウルトラ警備隊西へ」の動画は、前編にて物語の解説を行い…後編にて、実際のロケ地をめぐるスペシャル企画を考えております。2022年現在のアンヌ坂はいかに??

「東洋一のマンモス港、神戸は、今、侵略の嵐を前に、深い眠りから目覚めようとしていた」

ナレーション

 

あらすじ

地球防衛軍ワシントン基地は、暗黒の星といわれるペダン星に観測ロケットを打ち上げた。

ところが、ペダン星には人類より優れた科学力をもつ生命体が住んでいた。観測ロケットをみたペダン星人は、地球人が侵略をしかけてきたと誤解して、報復をすると無電を送ってきた。

六甲山にある防衛センターでは、世界各国の科学者をよび対策会議を開こうとしていた。

しかし、悉く暗●の魔の手にかかってしまった…一人生存者としてドロシー・アンダーソン博士がウルトラ警備隊に保護された。

ウルトラセブンの技が一切きかない巨大ロボットが現れタンカーを振り回す…神戸の街を舞台に007顔負けのスパイSFドラマが繰り広げられる。

 

その70 第14話で●●突然の変更の謎

はじめ、ウルトラセブンのタイトルは、砂絵のような画面からもこもこと、迷彩柄のミリタリーなタイトルが現れる感じでした。突如、ここでQから初代マンと同じような、回転した渦巻きから、赤バックのタイトル表示になります。

ウルトラマンシリーズの中でも、途中でオープニングのタイトルが変更になったセブンは珍しいです。

予定では初代マンとはちがった、ドットのようなものが集まって、タイトルが現れる、新しい画を撮ることをねらっていたのですが…小さな粒を並べて、上から塗装をしてしまったせいで、台を揺らして動かそうとしても、粒がくっついて動かない不測の事態が発生してしまいました。

仕方なく下から突くことによって、ばらすことに成功したのですが、納得のいかない映像となってしまった、とスタッフは嘆いたそうです。

ちなみに、この渦巻きの画の元のサイズは、テレビサイズくらいの小さな容器を勝手にイメージしてしまいますが…実物はプールに大量の塗料を流し込んだものを、かき混ぜて作られた、桁違いのスケールで製作されたのでした。

セブンのオープニングを作った、中野イマジネーションは、後に「帰ってきたウルトラマン」のような、印象的で美しいオープニングを製作する技術は、今やオーパーツ化してきており、CGを使わずに特撮で再現する事は難しいとされています。

 

その71 美しいドロシー博士と幻のシナリオぶろ

美しいドロシー・アンダーソン博士を演じていた、ブロンドヘアの美女は、リンダ・ハーディスティさんという、アメリカからの留学生でした。勉学に励みつつ、セブンだけでなく「キイハンター」など、日米合同合作の映像作品に出演されていました。

役を演じたドロシー博士と同様に、リンダさんご本人も努力家で勉強熱心な方で、アフレコもご自分でやりたいときぼうしていたくらいです。のぞみはかなわず、声は声優の牧野和子さんがされています。

ちなみにもう1人の外国人俳優、ワシントン基地の諜報部員マービンウェップを演じた、テリー・フォワンソワーズさんは、1972年のミュンヘン五輪に出場したオリンピック選手です。テリーさんは、セブンに出演した当時の事について、ご自身のブログで振り返っておられますので、ぜひご覧になってみてください。

マービンのアフレコは、ルパン三世で有名な山田康雄です。
おや?ルパンと言えばウルトラマンエースの声はあの銭形ですよね。これまた何かの縁ですかな。

ところで、金城哲夫のメモには、「私は私でない美しい女、ウルトラ警備隊を訪ねる、どうして私は私でなくなったの?」とあり…

じつは、ドロシー博士の初登場シーンは、教会ではなく、開通したばかりの新幹線での撮影が、検討されていました。

詳しくはYouTubeにて語っています!

 

その72 「探索」を「侵略」と誤解する物語といえば…

夕陽の波止場にドロシーの姿に化けて、モロボシダンの前に現れるペダン星人。

「人間は、ずるくて、よくばりで、とんだ食わせ者だわ。その証拠に、防衛センターでは、ペダン星人を、攻撃するために、…ひそかに、武器を作っている」

(ペダン星人)

それは、おまえたちが地球の平和を乱すからだ」

(ダン)

 

「それは、こっちのいうことよ!」

(ペダン星人)

 

「・・・」

(ダン)

 

「他人の家を、覗いたり、石を投げたりするのは、ルールに反することだわ」

(ペダン星人)

また、国際問題や社会派を感じさせる会話ですな。

あわや核戦争寸前とまでいきそうになった、「キューバ危機」以前に、1950年代にアメリカとソ連は友好関係を結びかけた、奇跡的な時期がありました。

残念なことに、アメリカの偵察機がソ連領空内で発見された事により、米ソ友好政策は断念せざるえませんでした。冷戦の歴史を暗示させるところであります。

さて、「ウルトラ警備隊西へ」のペダン星人は、第16話「闇に光る目」とアンノン星人と似た、地球人の「探索」機を「侵略」と誤解する、事件のきっかけとなるエピソードが重なってしまっています。

ウルトラセブンは2クール目前半まで、撮影の順番は、放送の順番とは異なっており、撮りためてTBSと円谷プロの意向で放送回が決まっていました…

これは初代マンが、高視聴率のお化け番組でありながら、制作が追いつかず、なくなく3クールで放送終了の英断を下さないといけなかった経緯もあります。

しかしTBSとしては、1月7日のお正月明けの高い視聴率を狙えるところにふさわしい、スケールの大きい作品を求め、この関西ロケを敢行した作品を放送したものだと考えられます。

 

その73 キングジョーの気をつけピンの謎

これまでのウルトラセブンの無双感を一蹴するように、セブンの技をいっさい受けつけない無敵のキングジョー。セブンは神戸タワーに取り残された人を守るため戦いますが…苦戦をしいられます…

セブンとキングジョーの戦う最中、記憶をとりもどしたドロシー博士の手により、ペダン星人の特殊合金を破壊する、ライトンR30の開発がはじまります…

ここから物語はアップテンポで、弾薬が完成して、六甲山から神戸港まで運ばれ、キングジョーを撃破して、事件の幕引きをみるわけですが…

ライトンR30を撃ち込まれた後、なぜか最期に気をつけピンッとなった姿で、かわいく後ろにバタっと倒れるキングジョーの姿はファンの間で、話題となり、長らく愛される名シーンですが…

なぜそこで気をつけするの?ってところですな。
おそらく2つの説が考えられます。

一つは、イカルス星人が人間体から変身する時にもそうですが…合成されそうなシーンでは、編集しやすくするためか、一度気をつけピンをしています。

二つめは、キングジョーが四つに分離した飛行形態の状態から合体もしくは、分離する際に、前後のシーンとつながるように、気をつけをピンしています。

アナログゆえの味というやつですな…

キングジョーの名前は、ウルトラファン以外でも知られる、まさに怪獣の中で不動の人気を誇るわけですが…

キングジョーの名前の由来が、作家金城哲夫の父のニックネームに由来するというのは有名かもしれませんが…ちなみに「キングジョー」という名前は劇中には出てきていないことにはお気づきでしょうか?

劇中では「ペダン星人のロボット」としか呼称されておらず、「キングジョー」という名前は後日、怪獣図鑑などの各種媒体にて後づけされたものなのです。

知名度の高いキングジョーに対して、影の薄いペダン星人は、人間体としてドロシー博士の姿で現れるわけですが、最後まで、シルエットのみです。ところが、令和になり、その全身の姿が明らかとなるのです…

 

その74 キングジョーと戦ったセブンの正体は、帰ってきた●●だった…

じつは、キングジョー戦での驚愕な撮影裏話があります…キングジョーと戦ったのは、ウルトラセブンではなく、帰ってきたウルトラマンという話です。
ん?ちょっと何言ってるかわからないですけど?

この頃、特撮は2班体制で撮影を行っていました。しかし、ウルトラセブン役の上西弘次は、スケジュール調整があわず、急遽キングジョーと戦うウルトラセブンの役は、当時怪獣ブースカなどで、スーツアクターをしていたきくち英一が代役を務めることになりました。

きくち英一といえば…いわずもがな、帰ってきたウルトラマンのスーツアクターであります。
まさかの夢の戦いが繰り広げられていたのですな。

きくちさんが代役することに決まり、早速、きくちの体型に合ったウルトラセブンのスーツが作られたそうです。ところが、きくちの背が高かったことにより、ウルトラセブンより強いはずの、キングジョーが背が小さくなってしまう問題が起きてしまいました。

なので、前編のラストカットにあるように、ウルトラセブンに馬乗りになるような、セブンとの対決ではキングジョーをあおるように撮る、撮影をおこなうという工夫がされました。

ちなみに、成田亨のデザインでは足の関節部分にパーツがあったのですが、撮影時に用意ができず原画と比べると不完全な部分があります

ジオングみたいな話ですな。偉い人にはわからんのですよ。
ちなみに、キングジョーの装甲はペダニウム合金という名前だそうです…
もはやガンダム!

さて、クライマックスの展開を時間軸にしてみると、ウルトラ警備隊の移動スピードが音速を超えているように思えますが…

その辺りは、次回のウルトラ警備隊西へ後編に取っておきます。

後編では、神戸のロケ地をめぐって、2022年のアンヌ坂を撮影して参りますので。お楽しみに…

<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「セブンセブンセブン アンヌ再び…」2001,小学館
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館