【ウルトラセブン|第9話|アンドロイド0指令】「ふたりのウルトラマン」上原正三デビュー作でダンの暴行事件とは?

2022年5月7日

※YouTubeでしか語っていない部分があります。

2022年3月久しぶりに、TVでウルトラマンの制作ドキュメンタリーのドラマが地上波にて放送されました。

「ふたりのウルトラマン」です。
さすがN●Kですな。

主人公の金城哲夫と上原正三、沖縄出身の2人の脚本家は、昭和ウルトラシリーズの礎を築き上げた功労者です。

             

第9話「アンドロイド0指令」は上原正三のデビュー作になります。

視聴率30%以上の順調な出だしとなった「ウルトラセブン」…。しかし、前の第8話「狙われた街」は名作回といわれるものの視聴率29%と翳りが見えはじめてしまいます。

そこには、「ウルトラセブン」のある弱点が浮き彫りとなってくるわけです…

ダンとアンヌにピンチが訪れます…

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あらすじ

夜の街をパトロールするソガとフルハシ、金色の髪をした美女が現れる。

美女に「モロボシ隊員」かとたずねられ、いたずら心で「そう。モロボシダン。」と答えてしまうフルハシ。

握手をした瞬間に体に電気がはしり、あわや命を落としかける。

フルハシの握りしめていたブローチには赤いマークと「アンドロイド0指令」という謎の文字が。

逃げた金髪美女は何者か?子供たちにおもちゃを配る「おもちゃじいさん」の正体とは?

深夜のデパートを舞台におもちゃvsウルトラ警備隊の戦いがはじまった…

 

その45  ウルトラと沖縄問題の謎

上原正三は、ウルトラセブンのみならず「帰ってきたウルトラマン」のメインライターを務め、第2期ウルトラシリーズの基礎を築き、昭和ウルトラシリーズに多大なる貢献を果たした脚本家です。

上原正三氏といえば、帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」が有名ですな。

上原氏は、まだ無名だった頃に、同じ沖縄出身の金城哲夫により、円谷英二と息子一の両氏に紹介されました。「脚本家になりたければ、何か賞を取りなさい」と言われ、その後すぐに芸術賞を受賞して、円谷プロで仕事をすることになりました。

上原氏の脚本家としての才能を物語っていますな。
デビュー1作目より、社会問題をSFとしてえがく、作家としての高い才能をみせます。

老人と金髪美女

謎の金髪美女を捜査するダンとソガの前に、子供達から「おもちゃじいさん」と呼ばれる謎の老人が現れます。ウルトラ警備隊の制服をみた「おもちゃじいさん」は、おもちゃを載せた荷車を引いて、子供達の住む団地からトタン屋根の廃墟に引き上げます。

画面には、古い汽車の車両が汽笛の音とともにうつり、ガラガラで赤ん坊をあやす割烹着を着た母親の姿、雑草に埋もれるトタンの建物など、ノスタルジーな昭和の風景が映ります。

「おもちゃじいさん」と対照的に、タイトルになった金髪のアンドロイドは、小林夕岐子さんが金髪のウィッグを身につけ、アイシャドーを濃く化粧することで、人形のようなきれいな顔で出演されています。

セブンには、ブロンド髪をした綺麗な金髪美女が出演しますな。
セブン放映1967年に、活躍したトップモデルである「ツイッギー」というイギリス人女性がいます。

「ミニスカート」のブームを巻き起こした事が有名な彼女ですが、金髪でキラキラ輝くブロンドヘアーは日本にも強い影響を与えました。「ツイッギー」は第37話「盗まれたウルトラアイ」でも描かれる、自由な若者たちのモダニズムの象徴でもありました。

「おもちゃじいさん」と「アンドロイド少女ゼロワン」を郷愁と流行の対比としてうまく書いてますな。

ところで、金城哲夫の「ノンマルトの使者」のように、ウルトラではしばしば沖縄問題の影があるとよく語られます。

上原作品の世界観には、第1作目からテーマに沖縄があるといわれます。

詳しくはYouTubeにて!

 

その46 おもちゃvsウルトラ警備隊

クライマックスでは、閉店後の真っ暗なデパート内で、ダンとソガはおもちゃの戦車や飛行機部隊に集中砲火を受けます。

派手な印象がありますが、「アンドロイド0指令」は予算のかからないように、巨大化して戦う特撮パートは作らず、デパートロケを行い、火薬を使うシーンだけセットを組んで撮影を行いました。

第9話の脚本の上原氏だけでなく、監督の満田かずほ、ともに若手だったので、会社から「金をかけるな」と理不尽な要求をされてしまったようです。
円谷プロの累積赤字はかなり深刻であったという事ですな。

ちなみに、ロケに使われたデパートは、銀座の松屋でした。劇中のシャッターに書いてあるように、当時のデパートには週一回定休日があったので撮影することができたそうです。ウルトラマンの第37話「小さな英雄」で、ピグモンが現れたおもちゃ屋のロケも松屋デパートで行われました。

おもちゃといえば、セブン放映の1967年に女の子に絶大なる人気を誇る商品がタカラより発売されました。

「リカちゃん人形」ですな。

海外の着せ替え人形がほとんどだった時代、リカちゃんは、日本の少女たちがより身近に感じられるようなファッションドールと言うテーマで、少女漫画のヒロインのような顔立ちが採用されました。

初期の頃からリカちゃんは、日本のファッションやトレンドが取り入れられて、ブロンドヘアーの髪は「アンドロイド少女ゼロワン」とモデルはちかいようですな。
ちなみに、りかちゃんの流行の影にウルトラの影響があるのはご存知かな?

リカちゃんは、初期の頃から年齢や性格、趣味だけでなく、身長、体重、靴のサイズ等体型などのデータから家族構成まで、細かなプロフィールが設定されていた事が大流行につながったとされています。

これは、男の子に人気のあった怪獣図鑑から、タカラ社がヒントを得て作った事が成功につながったとされています。

 

その47 敵の宇宙人が●●すぎ問題

チブル星人の由来は沖縄の言葉で「チブル=頭」からきていることは有名です。このタコの形をした宇宙人は1898年、イギリス人SF作家ウェルズによって書かれた、SF小説の超名作「宇宙戦争」に挿絵として書かれた火星に住む宇宙人の姿に由来します。

「宇宙戦争」はアメリカで1938年ラジオ放送されて、本当に宇宙人が地球に攻めてきたと全米中をパニックに陥れる大事件を引き起こしたのですが…以降、世界的に「宇宙人=タコ」のイメージが広まりました。

日本にも「宇宙戦争」が昭和に入って伝わり、少年雑誌にて火星人が襲来するSF小説が多く連載されました。挿絵にかかれたのはやっぱりタコの姿をした火星でした。

なぜタコの姿をしているかと言うと、19世紀に天文学者達の間で、火星の模様は人工的に作られた運河である都市伝説が信じられた事がきっかけです。巨大な運河を作れることから、火星に住む生物は脳が発達して頭が大きいとまことしやかに言われました。

同じようにチブル星人の大きい頭は高い頭脳の象徴で、その証拠に子供たちを洗脳して、武装させることで、大人たちが反撃できないうちに地球を侵略する、人間の心理につけ込む頭脳戦をしかけます。第1話のクール星人と同様の大きな頭をもち、手足が退化したタコのような形をした、古典的な宇宙人の姿をしています。

ところが、高い頭脳をもつ宇宙人であるものの、戦闘では体当たりするのみで、これまたあっけなくエメリウム光線で焼かれてしまいます。

この冷徹でいて野心的でありながら戦いになると弱すぎる宇宙人は、ウルトラセブンにテレビにおける致命的な部分をつくってしまいます。

 

その48  セブンの戦闘シーンが●●問題

「ウルトラセブン」は、視聴率30%以上の順調な出だしとなりました。しかし、第8話「狙われた街」より視聴率29%と翳りが見えはじめてしまいます。

視聴率20%あればヒット番組といわれる現代では信じがたいですが、同じ松屋デパートロケを行った、ウルトラマンの第37話「小さな英雄」が42.8%と驚異的な数字を叩き出したのに対して、ウルトラセブンは視聴率の低迷に悩まされます。

ウルトラマンは怪獣との格闘をじっくりと撮るのに対して、セブンは第1話のように登場してすぐに敵を決めて技であっけなく倒してしまう印象が強いです。

ウルトラセブンが強すぎ問題ですな…
ずばりセブンの戦闘は時代劇なのです。

(※1)                  (※2)

クライマックスで主人公に刀でバッサリと敵が切られて終わる、同時期に連載されていた手塚治虫の「どろろ」や石ノ森章太郎「佐武と市捕物控」のように、無双の主人公が敵を薙ぎ払う爽快感がよいのです。

あまり時代劇を見なくなってしまった現代では、どこかなじみのないものに感じられるようになりましたな。

こうした無敵のウルトラセブンが一気に事件を解決するような演出を、ドラマ用語で「デウス・エクス・マキナ」と言います。

「デウス・エクス・マキナ」とは「 機械じかけの神」ともいわれ、その意味は絶望的な状況に追い込まれた登場人物を、終幕でいっきょに救う演出の事を指します。

「デウス・エクス・マキナ」については、実相寺昭雄監督が後にウルトラマンマックスのなかで触れています。また、セブンXというウルトラセブンのスピンオフ作品のなかにも言葉が出てきています。

 

その49 上原デビュー作でモロボシダン暴行事件!?

モロボシダンがピンチに追い込まれて、いざ変身したくても、近くに仲間がいて正体がばれるために、変身できない場合があります。

いよいよ追い込まれた時に、「●●隊員ごめん」と言って、殴って気絶させるのは、人間の姿に擬態するタイプのウルトラマンには恒例な場面です。

いわゆる「ごめんパンチ」ですな。

ウルトラシリーズで初めて、仲間を気絶させ、強引に変身したのは、この回が初めてではないでしょうか?

これはかえって、後で疑われたりしそうですけどな。

物語の冒頭部分で、「あわやショック4ってところだったんだぞ」とフルハシがキリヤマ隊長にチクリと刺される作戦室の場面。次にキリヤマ隊長は

「それにしても一体何者なんだろう?…その大胆な手口といい、ただの女じゃなさそうだ。それに問題は、なぜ、モロボシダンを狙ったかだ」(キリヤマ)

これには、モロボシダンも心をチクリと刺された気持でしょうな。
この辺りは、第5話の疑惑が引き続き浮かぶわけですが…
【ウルトラセブン|第5話|消された時間】キリヤマ隊長はモロボシダンの正体を知っている裏設定とは?

ウルトラセブンに登場する敵の宇宙人は、モロボシダンの正体を知っていて罠にはめます。しかし、なぜウルトラ警備隊でダンばかり狙われてしまうのか?普通ならダンの正体に気づいてもおかしくないです。そこで、ファンたちにまことしやかに言われるている説があります。

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ちなみに、このシーンでアンヌは、ドクターの服を着て登場しますが、何故かアンヌのセリフはありません…。

次回の第11話「魔の山へ飛べ」にて、●●隊員の謎の失踪事件に繋がっていくわけですな。
例の件についてはチラッと次回、話をしていきたいと思います。

画像引用
※1手塚治虫公式HPより
※2石森プロ公式HPより

 

<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館