※YouTubeでしか語っていない部分があります。
第一話の痛恨の未公開シーンに…
「僕が宇宙人だと言う事は絶対の秘密だ。それが我々M78星雲人の掟だ。」モロボシダン
と、赤い富士山をバックに語る場面が存在したといわれます(※1参照)。
ウルトラセブンは、普段は宇宙人だと正体がバレないように、地球人モロボシダンの姿を借りて、「地球防衛のために働く」孤高の戦士なのです。
しかし、セブンに登場する敵の宇宙人はモロボシダンの正体を知っていて、地球侵略の障害を排除すべく罠にはめようとします。

普通ならモロボシダンの正体に気づいてもおかしくない話です。そこで、ファンたちにまことしやかに言われるている説があります。
👇忙しい人は聞き流しできるラジオをどうぞ👇
あらすじ
世界的な科学者ユシマ博士が来日した。地球防衛軍極東基地に、自らが開発したユシマダイオードを取りつけるためである。だが、ユシマ博士はすでにヴィラ星人(※2)によって洗脳されていた。これにいち早く気づいたダンが危険を訴えるが信用されず、それどころか疑いをかけられ拘束されてしまう。危うし地球!(円谷プロHPより)
その28 ウルトラセブン脱獄事件

第5話では、ビラ星人の術中にハマって、モロボシダンは独房入りとなってしまいます。防衛軍基地が破壊される危機が迫るとはいえ、あろうことかダンは脱獄のために、ウルトラアイでセブンに変身して鉄格子を破壊して脱出します。

いえいえ、第5話のラストは何事もなかったように、モロボシダンの汚名は返上され、ビラ星人の陰謀だけが暴かれ、事件は幕引きをみるのでした。


かの、庵野秀明監督は、アマチュア時代に制作した自主制作映画「帰ってきたウルトラマンマットアロー1号発進命令(※以降、庵野版『帰りマン』)」にて、セブン第5話のオマージュを感じさせる場面があります。
庵野版「帰ってきたウルトラマン」ですな!
庵野版「帰りマン」の物語においても、主人公であるハヤカワ隊員が監視つきで監禁されてしまう場面があります。主人公ハヤカワは、防衛チームMATが5000人の市民を見殺しに、怪獣に対する熱核攻撃を命令するイブキ隊長に反対して、隊長より自室での謹慎処分を受けます。
主人公ハヤカワ隊員は、自分の正体がウルトラマンであることがバレる覚悟で、「ウルトラアイ」を装着してMAT基地を破壊しながら変身します。

初代マン以降、怪獣や宇宙人を倒してウルトラマンが空へ帰った後に、人間体に戻った主人公が、「おーい!」と笑顔で戻ってくる場面は恒例になっており。他の隊員たちには「やつは不死身か!?」という一言で受け入れられてしまうのは、どのウルトラマンのシリーズでもあるあるな展開です。
ちなみに、ウルトラセブンでは第15話「ウルトラ警備隊西へ(後編)」にてキングジョーの母船を破壊後、ダンが夕日をバックに「おーい!」と帰ってきます。


※詳しくはYouTubeに解説しています。
その29 永遠の謎、ダンは何を言われたのか問題
第5話の中で謎とされている場面は他にもあります。
「この男、本当にユシマ博士なのだろうか。いや、間違いない。前に写真で見たことがある。しかし、なぜ、あんなことを言ったのだろうか。僕が宇宙人だということを知ってたのだろうか。まさか、そんなことはありえない。いずれにしても注意しなければ。」(モロボシダン)
ユシマ博士の送迎を任されたモロボシダン。はたしてユシマ博士から何を言われたのか、聞き逃したと思って、前の展開を見返しても謎なのです。


「南極にある地球防衛軍科学センターから1機の超音速ジェット旅客機が飛び立った。目的地は日本、地球の頭脳と呼ばれているユシマ博士が乗っていた。」(ナレーション)

画面は切り替わり、メディカルセンターでフルハシ、アンヌとお茶をしているダン。
なんでも、博士の発明したユシマダイオードを使って、この基地超遠距離レーダーをセッティングするんだそうです。(モロボシダン)
ユシマ博士の目的は基地の視察ではなく、「ユシマダイオード」による防衛軍のレーダーを強化する事である、と噂を聞いたダンの説明があります。
場面は戻り、超音速飛行機、しばらくすると何者かの手により、一瞬光につつまれ何か異常事態が起こったように見えます。ところが、その後は何事もなかったようにユシマ博士を乗せた飛行機は、富士の樹海にあらわれた滑走路に着陸します。
その間に大型の防衛軍超遠距離レーダー(※以降「長距離レーダー」)のカットが入り、次に作戦室が映ってウルトラ警備隊に招集アナウンスが入ります。ユシマ博士はウルトラ警備隊たちに出迎えられて、基地内を移動するモノレールに乗り込みます。

まず、「超音速飛行機」、「ダイオード」、「モノレール」という1960年代当時の未来を感じるハイテク技術の象徴が出てきました。ちなみに、ロケに使われたモノレールは1964年の東京オリンピックにあわせて、突貫工事によって作られたものでした。
そして、地球防衛軍極東基地の設備がパンパンッと、「メディカルセンター」→「長距離レーダー」→「作戦室」→「連絡モノレール」と映っていきます。その後も、「レーダー室」、「機械室」、「独房」、「ホーク1号の発射台」と基地内の様々な場所でドラマが展開していきます。
これは、第1話より引き続き監督をつとめた円谷一氏の、地球防衛軍極東基地の内部や組織を視聴者にわかりやすく説明しようとした試みでした。
第5話のキーとなる長距離レーダーは、科学特捜隊基地と違って、地球防衛軍極東基地は富士の樹海の地下深くにあるので、各話で基地の象徴としてよく登場します。

「我々はビラ星人。全宇宙の征服者だ。我々は地球侵略の手下としてお前を選んだ。お前の乗ったロケットを時間停止光線で捉え、時間の進行を止めておいて、お前の頭にビラ星人の心を植え付けた。お前は体はユシマ博士だが心はビラ星人になってしまったのだ。これからは、我々の指令を忠実に守って、地球征服に協力しなければならない。わかったな。」
ビラ星人
ん?博士は南極から基地に向かう超音速飛行機で移動中になにか事件にあったっぽいよね?
この「ロケット」発言は、ビラ星人の催眠術から正気に戻った博士からも
私は、ロケットに乗っていたのでは…。
ユシマ博士
と聞くことになります。

じつは、重要な前振りのシーンがカットされていたのでした。迎えにきたダンにユシマ博士は夢を見たと言って、次のようなセリフがありました。
地球防衛軍に一人だけ宇宙人がまぎれこんでいてね。そいつが僕の仕事を妨害するんだよ。
ユシマ博士
カットされた事で、ダンの独り言は意味不明になってしまいました(※1)。なぜそうなったのでしょう…。
その30 巨匠円谷英二の長男円谷一監督
複雑な口の触覚をもち、奇怪な動きをするビラ星人は、クール星人同様に人が着ぐるみの中に入るのではなく、ピアノ戦により動きを操作された操演宇宙人です。

円谷一氏とは、円谷英二監督の長男です。父の円谷英二はテレビが「電気紙芝居」などと呼ばれ、映画人に敬遠されていた時代に、長男である円谷一をTBSに、また次男である皐をフジテレビに入社させました。
円谷一は、勤務先のTBSと円谷プロとの橋渡しの役割をはたし、TBS社員として勤務すると同時に「ウルトラQ」、「ウルトラマン」ではメイン監督を務めました。

Wikipediaより引用
はい、「オプチカルプリンター」とは、セブンのエメリウム光線など、光線を実写フィルムに合成する映像合成装置です。
円谷プロはアメリカと高額な購入契約を結んでいましたが、当初フジテレビで企画していた「WOO」という番組で使う予定でしたが、企画が潰れてしまった事で代金が払えない事態に追いやられました。
しかし、円谷一の尽力によって、TBSの英断で引き取ってもらうことになりました。それがウルトラシリーズのきっかけとなったのは有名な話です。

ウルトラホークと宇宙船団とのドッグファイトシーンは、ウルトラセブンならではの、手に汗握る名シーンでしょう。こうした、特撮シーンは円谷一監督の実験的な試みの賜物です。
ウルトラシリーズの撮影では、大まかに説明すると、本編のドラマと特撮の二班に分かれて撮影しています。円谷一監督は、本編だけでなく、特撮撮影と演出を買って出ていました。
モロボシダンのウルトラアイ装着の仕方など、他の回にはない特殊な変身方法が試みられて、気になる所が多々あるのですが詳しくは後日語っていきます…。
当時を知る円谷プロのスタッフによれば、特撮優先で融通が効いて、編集で特撮がオーバーすると、特撮の方がお金がかかっているので、本編のドラマの方を削ることをしていたそうです(※1)。

台本の企画上では「ロケット」から「超音速飛行機」に変更があった事がはっきりとしています。でも、なぜかセリフは「ロケット」のままとなっていることは、コアなファンにも永遠の謎だそうです(※1)。
そんなことよりも、円谷一監督の大胆な試みが、セブンの世界観を見応えのある画を作り上げ、視聴者に分かりやすく伝え、普及の名作となったわけです。
物語のちょっとした矛盾について、ファンの間で次のような疑惑をもたらしているわけですが…。
その31 キリヤマ隊長はダンの●●を知っているんじゃないか説
ウルトラ警備隊は地球防衛「軍」のエリート組織です。一応「軍」なのです。軍隊としての規律は存在すると考えられます。なので、第3話「湖のひみつ」のようなモロボシダンの単独行動は本来ご法度のはずです。
そして、今回はウルトラガンの銃口をVIPの博士に突きつけてしまうという…とんでも事態が起こってしまうのです。

ビラ星人によって改造された偽のユシマダイオードを取り付けてしまったせいで、基地のレーダーは故障をしてしまいます。機械を設置したモロボシダンは、たくさんの防衛隊員の目の前でユシマ博士にスパイの疑いをかけられてしまいます。
疑いをかけられたモロボシダンは、博士の正体を暴くために後を追います。ビラ星人と通信しながらユシマ博士が破壊工作を行っている事を知ってしまいました。勢いに任せてモロボシダンは博士につかみかかります。

通報を受けてキリヤマ隊長たちは駆けつけます。ウルトラ警備隊の仲間にはがいじめにあったダンでしたが、それでもあきらめずウルトラガンを引き抜き、銃口を博士にむけてしまうのでした。とはいっても、証拠があるわけではなく、ダンは逆にピンチに陥ってしまいます。
「見たかね諸君。この男は僕を56そうとまでしたんだ。これではっきりしたでしょう。この男こそ宇宙人なんだ。スパイなんだ。」(ユシマ博士)
「フルハシ、ソガ。ダンを独房に監禁しろ。」(キリヤマ隊長)
モロボシダンはその場で射●されてもおかしくない事件が発生した訳ですが、キリヤマ隊長は、ダンを独房入りの処分にとどめるのみでした。キリヤマ隊長は博士に謝罪をしますが、ダンに対して宇宙人である疑念を呟く事はありません。

他の回でもモロボシダンが疑われたり、命を狙われたりすることが度々あります。


隊長や防衛軍上層部はモロボシダンの●●を知っているんじゃないか説です。

深読みになりますが、キリヤマ隊長がダンを独房入りさせたのは、ダンを守るための機転をきかせた指示とも考えられるのです。

ウルトラマン80は、最終回でウルトラマンに変身をしようとする直前に、隊長に知っている事を告げられ、変身を止められてしまう、これまでになかった異例の正体バレをみせるのでした。
なんと、その回の監督を勤めたのは、みっちゃんこと、満田かずほ監督なのです。これは憶測ですが、円谷プロは80で、ファンたちにささやかれている説を回収にかかったのではないでしょうか。

平成になると、「ウルトラマンティガ」では、隊長だけでなく、ヒロインにも気づかれているという、さらに新しい展開でした。
このように、長い年月の中でファンのおもいを叶える円谷ならではの粋な演出には、うれしく感じますね。
<注釈>
(※1)白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社より
(※2)ウルトラセブン放映当時の名称のママ。現在では「ビラ星人」が正式名称となっている。
<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
円谷秀明「ウルトラマンが泣いているー円谷プロの失敗ー」2013,講談社