【ウルトラセブン|第4話|マックス号応答せよ】顔丸出しのヤバい宇宙遊泳の真相とは?

2022年4月17日

※YouTubeでしか語っていない部分があります。

1970年代に「未知との遭遇」「スターウォーズ」にはじまったSFブームにおいて、高度なSF考証に高い再評価を受けることになった「ウルトラセブン」。しかし、第4話において、とんでもない珍百景が観られます。

それが、こちら…

ん!?宇宙空間で顔半分むき出し状態なんですけど…

宇宙空間をウルトラセブンに、ロープで引っ張られるウルトラ警備隊員。この顎むき出しで宇宙遊泳するヤバいシーンは第4話のラストです。なぜ、こんなヤバいカットになってしまったのか、解説していきます。

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あらすじ

地球防衛軍が誇る最新鋭の科学調査艦マックス号が、相次ぐ船舶消失事件の調査を開始したが、こともあろうにそのマックス号まで消失してしまう。行き先はなんと、宇宙空間だった。地球侵略を企むゴドラ星人の仕業だ。フルハシに化けて地球防衛軍基地に潜入したゴドラ星人をダンは見破るが、カプセルに閉じ込められてしまう。(円谷プロHPより)

 

その21 モロボシダン教習所に通う

「命令書に従って某地点まで行き、そこである男に会い、彼の指揮下に入れ。重大な任務だ。誰にも気づかれないように基地を出るんだ。いいな!」(マナベ参謀)

と極秘命令を伝えられるソガとアマギ。モロボシダンの運転するポインター号は、ソガに「左…」と指示を受けながら、命令書に指示された場所に向かいます。

ん?誰にも気づかれないように上官に命令されているのに… なぜダンがいるの?

モロボシダンは、元々はポインターの運転手から、出世を重ねて、正規隊員に昇格する設定でした。第4話は番組初期より「豪華船蒸発」というタイトルで、脚本制作されていた作品なので、極秘命令なのにドライバーとして、現地まで送迎する仕事を任されたのは、初期設定の名残りなのかもしれません。しかし、モロボシダン役の森次晃嗣さんは、運転免許をもっていません。

え?それって無免許●●?

いえいえ、森次晃嗣さんが運転するカットでは、後ろからスタッフが車を押す事によって、運転シーンが撮影されたので、なにもコンプライアンス的に問題ありません。ちなみに、アンヌも運転免許をもっていないので、同じようにスタッフが後ろからポインター号を押して撮影されていたそうです。

飲酒運転の横行していた昭和時代にきちんと道路交通法を守った円谷プロは素晴らし過ぎる。

出演がきまって、モロボシダンとアンヌは運転免許をとるため、忙しいスケジュールの中、教習所に通い出したそうです。ところが、当時20代で運転免許を取得するのは難しく、結局撮影には間に合わなかったそうです。

 

その22 ダンのリアクション可愛過ぎる問題

到着した場所は海岸だった。 沖合には、巨大な船の姿が…

「マックス号だ。あれに乗るんですね。さすがは、地球防衛軍の誇る新造原子力船だぁ。かぁっこいいなあ~、ボクも1度は乗ってみたかったんですよ!」 (モロボシダン)

まるで子供のように無邪気にはしゃぐダン。第6話の「ダーク・ゾーン」などでも、「わぁっ~い!」と子供っぽい無邪気によろこぶダンの様子が観られます。

セブンは人間の姿をした擬態型のウルトラマンだから、性格は人間体と変わりはないんじゃない?ということは…

セブンは元々、かわいい性格なのかな?

まるで子供のように無邪気にはしゃぐダン。第6話の「ダーク・ゾーン」などでも、「わぁっ~い!」と子供っぽい無邪気によろこぶダンの様子が観られます。

モロボシダンの由来は、後々語っていきますが、「薩摩次郎」という地球人の魂をモデルとして、人間体に変身しているので、セブンの元々の性格であるのか、はっきりとした答えはわかりません。

詳しくはYouTubeにて語ってます!

 

その23 円谷英二は海を●●でつくった

海に浮かぶマックス号はいわずもがな特撮によるものです。ちなみに、こうした海に浮かぶ船をリアルに撮影するために、円谷英二監督はある食べ物を使って再現しました。

それは一体なんでしょう?

有名な●●の海の話ですな…。

と、ピンときた方はさすがです。戦前の1942年に公開された、円谷英二監督作品、映画には、あまりにもリアル過ぎたために、GHQに本物の記録映像と疑われ、公職追放処分を受けてしまった有名な逸話があります。

「真珠湾のオープンセット」の写真はGHQによって押収され、現在もアメリカ海軍の資料としてWikipediaより確認できます。寒天の海を船が進むと、本物の海を航海するように、船は綺麗に白波をたてます。

アメリカ軍の資料になるとは、伝説に残るの特撮技術ですな。

さて、セブンの話に戻すと、マックス号の停泊している海岸は、じつは海じゃなくて山梨県本栖湖でのロケでした。満田監督によれば、当時は今のように交通事情はよくなかったので、大月で1泊した事を回想しています。

さらに、アンヌ隊員役のひし美ゆり子さんによれば、円谷プロの撮影後の打ち上げは楽しいことで有名で、第4話のロケで宿泊した大月の旅館での宴会は、満田監督が率先して場を持ち上げた事を打ち明けています。

さすがは、みっちゃんですな。

 

その24 「みっちゃん」って誰?

「マムちゃんねる【公式】より」

みっちゃんとは、ウルトラセブンのメイン監督をつとめた満田かずほ監督の事です。ウルトラセブンを監督した当時、30代の新進気鋭の若手監督でした。出演者と近い年齢もあり、親しみがあった事から「みっちゃん」という愛称で呼ばれ、以来、出演者だけでなく、ファンの間でも「みっちゃん」と呼ばれるようになりました。

ニュージェネ世代にお馴染みの田口清隆監督や、坂本浩一監督のような円谷プロを支える監督ですな。

その通りです。満田かずほ監督は、ウルトラQより続く、昭和ウルトラシリーズや円谷プロの黎明期を築きあげた、名監督の一人であります。

満田監督といえば、初代ウルトラマンにはなかった、「物語にヒロインを登場させ、主人公とのラブストーリーに、少年少女たちに期待させる」という、アンヌがダンに密かにこを持っている設定をとりいれた話が有名です。

特に、ことをあるごとにダンの事を…アンヌが心配するのは好意の表れですな。

子供の自分には分からなかったのですが…。

さらに、ストーリー後半になるにつれて、デートシーンが描かれるなど、徐々に恋人同士のようなはっきりとした関係が描かれていきます。

なので、セブンの屈指の名場面である、最終回のアンヌとダンの別れのシーンは、満田監督のねばり強い演出による成果といえるものです。

4話においても、アンヌは謎に怪我をしてきたダンに、「もう、絶対乱暴しちゃ、いやよ」とやさしく包帯を巻きながら、「そうだわ、ダンにいいものあげる」とダンにお守りを渡します。

ダンはウルトラアイを盗まれてテンションだだ下がりの状態だったので、うわの空だった訳ですが、そんなダンの表情を見て不満露わにムクれるアンヌという、さりげない演出にファンたちは心つかまれるのであります。

ちなみに…アンヌからダンへの幻のプレゼントがあったのは知っているかい?

詳しくはYouTubeにて語ってます。

 

その25 珍場面の真相とは?

さて、まさかの2話連続してウルトラアイを盗まれてしまうモロボシダン。

セブンが美女には弱いという噂は、ピット星人により宇宙中に知れ渡ったのですな。

それは分かりませんが、ワンレングスの髪に白のワンピースと赤いグローブ、時代を感じるエキゾチックなモデルタイプの女性の姿に、モロボシダンは思わず隙をみせたところに、どデカいバール殴られて気絶してしまいます。

ウルトラセブンは人間体になるとけっこう弱すぎですな。

その気になるところは後日語っていきます。

さてその頃。マックス号では、先に乗船していたタケナカ参謀より、ソガ・アマギは極秘任務の説明を受けていました。

日本のある海上で、1ヶ月前より、相次いで何隻もの船が消息を絶っていました。マックス号の任務は、船の捜索と、何者による陰謀かを突き止め、それを撃滅する事でした。

船が消息を絶った地点に到着してすぐ、マックス号は、突如赤い霧のようなものに包まれ、空の果てに消えていきました。

CG技術を使わずにこのトワイライトな映像を作っちゃうのが円谷プロの技術がヤバすぎるところですな。

しかし、この第4話は謎にツッコミどころの多い作品となってしまいました。

モロボシダンがウルトラアイを盗まれる  第3話に同じ
地球防衛軍基地に爆弾が設置される  第5話に同じ

そして問題のラストシーンです。

顔半分丸出しで宇宙遊泳してますな。

このヘルメットに酸素を送り込むチューブを装着しただけの格好で、宇宙遊泳する映像となり、これには子供でも違和感を感じてしまいます。

とはいっても、ウルトラ警備隊のヘルメットは万能で、エアーカーテン機能によって、露出した部分でも、空気の壁によって真空状態でも気圧を保つ事ができたり、有毒なガスから身を守る事ができたりするのです。

しかし、このヘルメットエアーカーテン機能は、

約30年後の「ウルトラマンティガ」まで…

説明を待たねばならず、ファンのもやもやは長く続きました

じつは初期の脚本にはウルトラセブンが「気密服(宇宙服)」を持ってくる案もありました。

第4話は「豪華客船蒸発」→「地球壊滅計画」→「マックス号応答せよ」と3回にわたって…

脚本の書き直しがあったとわかってます。

な、なぜそんなことになったの?

本作の脚本はメインライターの金城哲夫氏とならんで、山田正弘氏の名前があります。山田氏はウルトラQでは「ペギラ」「カネゴン」「パゴス」といった有名怪獣を生み出した名作家です。

といっても山田氏は、脚本家というよりも、かの有名な谷川俊太郎と交流がある詩人でした。

ウルトラQの第6話「育てよ!カメ」第12話「鳥を見た」というウルトラ作品の中で、異色な世界観の物語を書く作家でした。ウルトラセブンでは本作と第32話「散歩する惑星」は、連名とはいえ、山田氏の執筆した貴重な作品なのです。

とはいえ、山田氏はTBSの仕事で赤坂の旅館に1ヶ月缶詰になっても、一行も書けなかったという武勇伝をお持ちなので、脚本制作の時間に余裕がありながら、メインライター金城氏に引き継がれ、スタッフやプロデューサーより様々な要求を受けた結果、ツッコミどころが生まれたと考えられます。

そもそも…第4話でセブンは巨大化する必要あったの?

ウルトラアイを取り返すことのできたモロボシダン。ゆっくりとウルトラアイを装着して変身しました。

セブンとゴドラ星人の戦いは地球防衛軍基地内ではじまります。さらに謎なのは、「表出ろ」的な感じで、わざわざ外での巨大化した戦いが始まってしまいます。

しかし、それには理由があるのです。

 

その26 セブンは仮面ライダーの先駆けか!?

ウルトラセブンの特徴としては、他のウルトラマンと違って、いわゆる「グングンカット」と言われる、右の拳を突き上げて巨大化する変身カットがありません。

人間サイズのまま変身をするのがセブンの特徴ですな。

そうなんです。ウルトラマンは変身と巨大化はセットなのですが、ウルトラセブンは変身によって巨大化はしません。体の大きさは人間サイズのままです。巨大化して戦う場合は、別カットになります。

巨大化のポーズも、両腕を立ててマッチョポーズをする事によって、ぐんぐん体が巨大化していくという、他のウルトラマンにはない独特なポージングスタイルです。

ウルトラセブンってあんま巨大化しないんじゃない?

案外そうでもないのです…。

案外そうでもないのです…。セブンが一度も巨大化せずに、人間サイズで敵と戦闘して、事件の解決をした放送回は、10回もありません。とはいえ、記念すべき第1話で巨大化せず、クール星人を呆気なくやっつけてしまった事や、人間サイズで活動する場面が多いので、巨大化しない印象が強いウルトラマンではあります。

ところで、人間の等身サイズで、スーツアクターが演じるヒーローといえば、後の70年代に仮面ライダーや、戦隊シリーズなど圧倒的な人気を帯びてくるわけですが、すでにウルトラセブンはその形を先取りしていたと言っても過言ではないでしょうか。

巨大化しないセブンは地味という印象だったの?

しかし、時代が早過ぎました。ウルトラセブン放映時、世は第一次怪獣ブーム真っ只中。特撮やSFといえば、巨大な怪獣が出て街を破壊する、怪獣同士が格闘をするのが売りでした。円谷プロを代表する「ゴジラ」にはじまり、松竹、大映…と、日本のありとあらゆる映画会社が怪獣映画を制作する異常事態が起こっていました。

正直な話、ウルトラマンは視聴率40%を打ち出す人気があったのに対して、ウルトラセブンは後半より視聴率が低迷してしまいます。やはり、巨大化したヒーローと怪獣の戦いを視聴者である子供たちは求めていたのでしょう。

 

その27 ウルトラセブンのNG曲をゾフィ兄が●●

というわけで、第4話の戦闘シーンは、ゴドラ星人は盗んだポインター号でわざわざ原っぱまで行って巨大化して、そこへセブンが巨大化して挑むという展開にならざる得ないのでした。アンヌを連れ去ろうとしていたゴドラ星人をアイスラッガーで真っ二つにしなかったのは、その26にて触れたような理由からでしょうか…

BGMかっこよすぎて、そんな事どうだっていいんだよね。

ダンに化けたゴドラ星人がポインター号で逃走するシーンより、「タタターン」と流れてくるBGMは主題歌「ウルトラセブンの歌」のNG版です。

この曲は、後に「ウルトラマンA」「ウルトラマンタロウ」にて、ウルトラ兄弟の長男ゾフィが助けにくる時の曲として使われるようになり、いつしか「ウルトラセブンの歌」ではなく、1984年に映画【ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団】が上映されるまでは、「ゾフィのテーマ」として定着してしまうのでした。

冬木透氏の作曲したBGMは、「ウルトラ警備隊の歌」をはじめどれもかっこいい名曲ばかりですね。「ウルトラセブン」だけでなく、「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」においても同じセブンのBGMが使われますが、どのウルトラシリーズで聞いても熱くなりますね。

物語の冒頭に巻き戻すと、洋楽版ウルトラセブンのような歌が聞こえてきます。子供番組では珍しかった英語の歌詞で作詞された「ULTRA SEVEN」です。みっちゃんこと満田かずほ監督はこの曲がお気に入りのため、満田作品にはよく使われているBGMです。

「子供番組を作っているつもりはなかった。」

森次晃嗣

怪獣ブームに押されながらも、ハードな世界観を制作スタッフは追い求めて、つくりあげられたウルトラセブン。70年代の「未知との遭遇」からはじまる空前のSFブームにおいて、高く再評価され、カルト的な作品として語り継がれているのです。

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<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「セブンセブンセブン アンヌ再び…」2001,小学館
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館