【ウルトラセブン|第3話|湖のひみつ】エレキングのエロい本当の姿とは?

2022年4月17日

※YouTubeでしか語っていない部分があります。

円谷一監督の要望により、重要な第1話の撮影を後に回しています。俳優を役に慣れさせるため、撮影は第3話からはじまりました。

ウルトラセブンだけでなく初代マンも同じだったんだよね。

主人公モロボシダンを演じる事になった、俳優の森次晃嗣は第3話がクランクインとなりました。しかし…モロボシダンは、撮影時に高熱で体調を悪くしていたと、共演したピット星人役の高橋礼子さんによる証言で発覚しました。

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あらすじ

木曽谷付近に謎の物体が落下し、ダンとフルハシが調査に向かう。謎の物体とは宇宙船であった。船内に入ったダンは謎の少女によって、ウルトラアイを盗まれてしまう。やがて、付近の湖から怪獣エレキングが出現する。ダンはカプセル怪獣ミクラスを立ち向かわせるが、エレキングの電気攻撃には歯が立たない!

(円谷プロHPより)

 

その13 クランクインは最終回の伏線?

モロボシダンが高熱を出して苦しむと言えば…最終回の「史上最大の侵略」が思い起こされますな。

まさかの舞台裏では、その最終回の伏線ともいえる、過酷な状態での撮影スタートだったということがわかりました。

 『ウルトラセブン』の頃は、なにしろ1年間大変でした。ほとんど休みもないし、その頃から藤沢に住んでますから朝5時の始発に乗って、帰ってくるのが夜の11時になるんですよ。それで翌日はまた5時の電車に乗ってのくり返しでしたから。 東宝美術センターに集合して、富士五湖界隈の山の中に行って撮影してくるんです。毎日朝から晩まで、目の前にいない怪獣を相手に戦い続けてきて大変でした。

※森次晃嗣@魂ウェブインタビューより引用

これも有名な話ですが…

アンヌ隊員役にひし美ゆり子さんが正式採用され、はじめて隊員服を着て写真撮影したのも、森次晃司さんがこの第3話を現場撮影が終わって、東京のスタジオに帰ってきた時でした。ダンとアンヌ二人の俳優が初顔合わせをした、記念すべき制作第一号がこの第3話なのです。

川原で発見された宇宙船に乗り込むダンとフルハシ。そこへ、謎の少女が現れます。

恒例のモロボシダンの独り言がはじまります。

待てよ…女の子の足で、あの険しい山道をどうして我々より先に来ることができたんだ…靴もきれいだ…変だ

(モロボシダン)

ダンは宇宙人として鋭い推理力により、少女が只者ではないと察します。ピット星人役の高橋礼子(正確には玲子)さんは、16歳の高校生でした。高橋さんはひし美ゆり子さんとの対談のなかで当時をこう振り返ります。

メイクをどういう風にするかって話になって、撮影の時は、最初は湖のシーンでメイクもすごく濃いかったんですけど、撮影が夏だったので、汗をかいてメイクが取れちゃってしまって。メイクさんがつけまつ毛をつけてくれても、目をパチパチしているうちに取れてきちゃって、もう取っちゃってもいいかという感じで、だんだんメイクが薄くなってきちゃったんです。

(※ピット星人@高橋礼子さん)

という実際のピット星人は、湖や山の中での撮影にとても苦労していたエピソードがあります。※ロケは富士五湖の内の一つ【西湖】。

 

その14 アンヌの名台詞「隊長がプリプリよっ!」

ウルトラアイを盗まれてピンチに陥るモロボシダン。ウルトラアイを取り返すために、ダンはやむなく宇宙船を見張り続けるが変化はない。ダンはアンヌへビデオシーバーで連絡をとる。白衣を着たアンヌが映る。

「ダン、一体どうしたっていうの?…本部に連絡もしないで、単独行動をとったりして…隊長がプリプリよっ!」(アンヌ)

白衣を着たアンヌは、ウルトラ警備隊に保護され、連れてこられた謎の少女の治療に取り掛かろうとするわけですが…。アンヌは看護師や医師の助手と言うわけではなく、ドクターであり女医であるという設定なのです。

アンヌはウルトラ警備隊に所属でしたが通常はメディカルセンターに勤務しているという設定でしたから、ドクターのスタイルだったわけです。

後に、テレビ電話のCMやニュースの素材として、切り抜かれ、有名となった白衣を着たアンヌが、ビデオシーバーで「隊長がプリプリよっ!」という誰もが観たことのある名シーンですが、そこで髪を下ろす仕草をみせます。

アンヌの髪型は第2話ではアップの状態。しかし、以降髪をおろした状態になります。舞台裏ではアンヌ隊員の髪型どうする問題が起きていました。第2・3話のメディカルセンターのシーンは、ひし美ゆり子さんにとってクランクアップでした。タイトなスケジュールの中で当時、撮影は同時進行でまとめ撮りされていました。午前中に第2話が、午後は第3話の撮影がされました。

撮影の午前中はアップにしていた髪型。しかし、現場の様子を見た満田かずほ監督の一言でボツになってしまいます。
「なんだか都はるみみたいだなぁ、髪を下ろしたほうがいいよ。」

(満田かずほ監督)

ということで、アンヌの髪はおろすようになりました。とはいえ、それでは髪型がつながっていないので、ビデオシーバーの画面で、髪の毛をアップスタイルから下ろすカットができたという逸話があります。

なんたって、新人俳優ひし美ゆり子の初撮影ですからな。

アンヌの髪型どうするんだ問題は、ひし美ゆり子さんにとって特別なおもいがおありのようです。

ちなみにアンヌ隊員の髪型は、他のウルトラヒロインに比べて、回ごとに髪型が変わる事が多いです。しかし、満田かずほ監督の回では、最終回のようなロングヘアのアンヌが度々登場します。満田監督のアンヌ隊員に対する思い入れのうかがえるエピソードのひとつです。

その15 時代を先駆けるセブンの世界

ウルトラアイを盗まれたダン。出現した宇宙怪獣エレキングに対して、カプセル怪獣で応戦をします。

カプセル怪獣とは、モロボシダンがウルトラアイが盗まれたり、使用不能になったり、ウルトラセブンに変身できない時に、代わりに戦ってくれるスケット怪獣です。

すでに、第1話ではウインダムが登場しており、第2話ではミクラス、第20話ではアギラと、3体の怪獣が確認されます。

しかし、第3話でカプセル怪獣を保管しているケースには5つのカプセルが確認されます。なので、幻のカプセル怪獣が2体いるか、もしくはカプセルの中身は空なのか、真相は謎のままです。

ところで、この投げたカプセルから怪獣が出てきて、怪獣同士が戦うというシュチュエーションは、見覚えがありませんか?

ポケットモンスターですな。

ポケモンの創立者田尻智さんは、ウルトラセブンのファンであり、カプセル怪獣のアイデアはポケモンのルーツにつながる事を公にもおっしゃられています。【エレキング】の電撃攻撃など、黄色いネズミのポケモンの技を彷彿とさせますよね。

また、ウルトラ警備隊のビデオシーバーというアイテムは、ガジェットという言葉もない時代に、未来を予見する画期的なアイデアでした。

2000年代初期ドコモのビデオ電話サービスが始まった時には、CMではやはりこのウルトラセブンのビデオシーバーが話題となりました。

さらに、Apple Watchなどの登場により、2022年現在、ビデオシーバーの技術は当たり前のものとなっています。メインライターである金城哲夫さんの、苦悩のうえに完成したSF考証は、未来を正確に捉えていました。

 

その16 エレキングの正体がエロすぎる

エレキングについては秘密の話もあります…

ウルトラシリーズで人気の高い【宇宙怪獣エレキング】。な、なんと企画段階では電気ウナギの進化した姿という設定でした。初期案ではピット星人の最期の台詞は…

「でも、あきらめないわ。地球の動物たちを、全部恐ろしい怪物に育てて、人間を皆殺しにするのよ。」

ピット星人

となるはずで、電気ウナギを幼体として、怪獣に改造したミューテーション(生物兵器)という設定だったということがわかりました。思い返すと、戦闘の中にミクラス、ウルトラセブンがエレキングの尻尾にぐるぐる巻きにされて、電気ショック攻撃を受ける、というシーンがあります。

ゆっくりとぐるぐる巻きにされることに、正直、違和感を感じてしまうところがありますが、あれは初期にあった電気ウナギの攻撃の名残なのです。

この巻きつき攻撃の演出は、第11話「魔の山へ飛べ」の宇宙竜ナースにて洗練されていきます。

とはいえ、釣り人の鰻を捕獲する魚のカゴから、少女がうなぎを奪うというシチュエーションでは不自然すぎる、ということから設定が変更されることになりました。

エレキングの白黒模様は、フォルスタイン牛をもとにデザインされた事はよく有名な話です。

え?エレキングの色って黄色じゃないの?

そうなんです。白い姿だったものが、撮影を重ねるにつれて、汚れてしまって黄色になってしまい、「エレキングの色=黄色」と誤解が広まったということは有名な話です。

このように、特撮技術監督が予期できなかったことが、子供たちやファンの間で、脳内補完されている事はよくあります。例えば、鈴木清監督はエレキングの角がくるくる回る事をあまり好きではなかったと言うことが、記録として残っています。

しかし子供の頃に観ていたファンたちが「改造されて指令電波を受けていると思っていた。」と言われてなるほどなと納得したといいます。

このようにウルトラや円谷作品において、後にファンや雑誌などによってまことしやかに言われてきた事は、巡り巡って公式設定となることはよくあります。逆に、後に悲劇を生む事件もあったわけですが

ところで、エレキングの本当にヤバい話は、ビキニ姿で人間の姿をしたピット星人が、逃した小さい幼体のエレキングは、●●を美術スタッフが利用して造ったという秘密の話です。ビキニを着た16歳の高校生が●●を持って逃げるという、とんでもエピソードが発覚したわけです。

※詳しくはYouTubeで語っています。

 

その17 ウルトラセブンは美女に弱い問題

第3話のタイトル「湖のひみつ」は、初期案では「美しき侵略者」でした。

「地球人の男性は、可愛い娘に弱いってことがわかったんだもの、うふふふふ……」(ピット星人)

とあるように、美女に化けることによって、男性隊員につけこむことで防衛軍基地に侵入成功して、破壊工作を行うという、智略に長けた宇宙人であったわけです。

その後、「地球人の男性は美女に弱い」という弱点が宇宙中に知れ渡ったのか、モロボシダンに近づき、ウルトラアイを盗んだり、命を狙ったりする宇宙人たちは、美女の姿でやって来ます。

メインライターの金城さんの作品のプロットメモには、「ミスユニバース」という言葉があり、ウルトラセブンの客演キャラの設定では、美女である事は重要であったのです。

ピット星人の人間体は二人登場して、二人とも同じ顔をしていますな。

これを観て、マナカナのような双子の役者がされていると勘違いされますが、高橋礼子さんがお一人で演技しています。

これは二つの映像を合成することによりできる演出なのは、解説せずともわかることですが、わざわざ合成にする事が円谷プロのすごい事なのです。

フィルム時代、合成というのは、画像が粗くなるので、あの映画の本場ハリウッドでさえ、なるべく回避しようとしました。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を例にすると、1人が2人を演技するには、つなぎ目をなくすために物をマスクとして置いています。そうした、つなぎ目や境がわからない作品づくりが、円谷プロの合成技術のレベルが世界に誇るものである事を物語っています。

 

その18 なぜダンはウルトラアイをよくなくす問題

「あっ、しまった!ウルトラ・アイが盗まれた!…なんとしても奪い返さねばならん。ウルトラ・アイは僕の命なんだ!」(モロボシダン)

モロボシダンがピンチに陥るきっかけNo. 1は、変身アイテムであるウルトラアイ使用不可能問題です。盗難、紛失、車に忘れるといったような、様々なトラブルに見舞わられるわけですが…

制作側にはある意図があったそうです。

前作、「ウルトラマン」は強すぎたので、ウルトラセブンは事故で利き腕が使えない、サウスポーにしようという案があったと満田監督は語っています。サウスポー設定はなくなった代わりに、回を重ねていくうちにセブンには弱点が追加されていきます。

なかでも、ウルトラアイが使用不可能問題は、セブンの最大の弱点です。後の【ウルトラマンレオ】では、セブンは負傷した事がきっかけなのか、なぜかウルトラアイが発火して溶けてしまい、半永久的に変身能力を失ってしまいます。

その後、人間体での戦いを強いられるわけですが「ウルトラ・アイは僕の命なんだ!」と言うダンの焦りは相当なものな事がわかります。

 

その19 アイスラッガーの謎

ついこの間、うちの子供が赤白棒をウルトラマンのとさかのかたちに被って、相手に向かってシュッと投げて遊んでいました。ウルトラセブンの決め技アイスラッガーのマネです。誰もが知っているセブンの技「アイスラッガー」。

しかしなぜ、「セブンスラッガー」ではなく「アイスラッガー」なのでしょうか?

もともとは、「ウルトラセブン」は「レッドマン」というタイトルの初期案以外にも、もう一つ「ウルトラアイ」というタイトルが検討されていました。

その後「ウルトラアイ」は変身アイテムの名前として採用され、「アイ・スラッガー」にも名残りが残っていることを満田監督は語られます。

昭和セブンでは真っ直ぐ飛び、途中で白くエネルギーを帯びたあと、怪獣を切断するストレートタイプでした。しかし、平成セブン以降では、手裏剣のようにくるくる回って攻撃するブーメランタイプに変わりました。

当時同時連載されていたマンガ版の「ウルトラセブン」では、くるくる回るアイスラッガーの描写があり、本来は手裏剣のイメージとしてアイスラッガーをくるくると回して飛ばすイメージがあったのかもしれません。

 

その20 ウルトラホークの謎

第3話ではウルトラホーク1~3号が総出撃します。ウルトラホークは格納庫から発射台まで移動する前に、赤い市松模様のゲートが開きます。

ウルトラホークの色が共通して銀色な事や赤い市松模様のゲートには理由があります。

市松模様って鬼滅みたいだよね?

2022年、市松模様といえば「鬼滅の刃」のブームにより世に浸透していますが、1967年セブン放映時は、市松模様や銀色は、宇宙や未来を表す色でした。米ソ宇宙開発競争真っ只中、アメリカのジェミニ計画やアポロ計画は、前作「ウルトラマン」の第23話「故郷は地球」のジャミラの物語のように、ウルトラシリーズに強い影響を与えています。

セブン放映の翌年、SF映画の不朽の名作「2001年宇宙の旅」が上映されます。

スタンリー・キューブリックは同様に、アメリカの宇宙開発を参考に宇宙服や宇宙船のデザインを考えました。NASA 1960年代前半ロケットと宇宙服は銀色にしていました。またアクセントに赤い市松模様がありました。

ところがどっこい、キューブリックが映画を撮影している途中で、NASAはロケットや宇宙服を現在と同じ白色にカラーチェンジしてしまったのです。

キューブリックは撮影途中で、色を変更する事ができず、映画前半では銀色、後半からは白色となってます。

湖と山のカットが写り、突然、「フタゴヤマ」がスライドして、中からウルトラホークが1号は発進します。ウルトラホーク3号は滝の奥に隠された、ゲートより発進します。

イギリスのサンダーバードの影響によるものです。秘密基地から発進の他にも、ウルトラ警備隊の兵器には、各所にサンダーバードのオマージュがみられます。

それは、ウルトラとサンダーバードの因縁があるからですが…その話は後のエピソードで語りたいと思います。

ホーク3号が滝の水を割るようにして出撃するシーンは、子供心にワクワクしたものですが、作り手としては、滝の水圧のせいで、どうしても出撃するホーク3号が一瞬下がってしまうという映像になってしまったことに不満があるそうです。

特撮に対するスタッフの熱意とこだわり、職人気質な完璧主義、熱い思いは「ウルトラセブン」を語るうえでは欠かせません。

 

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<参考文献一覧>
白石雅彦『「ウルトラセブン」の帰還』2017,双葉社
ひし美ゆり子「セブンセブンセブン アンヌ再び…」2001,小学館
ひし美ゆり子「アンヌ今昔物語ウルトラセブンよ永遠に…」2017,小学館