
東宝が公開した【特報③】の予告によって、ネロンガやガボラの怪獣だけでなく、ザラブ星人の姿やメフィラス星人の名前が映るなど、宇宙人も出演する事が明らかとなってきました。
これまで、多くのウルトラマンを語るYouTuberの中では、様々な憶測が飛び交っていました。「シン・ウルトラマン」のテーマは、初代マンのネロンガ・ガボラの登場によって、エネルギー問題といわれたり、「シン・ゴジラ」に引き続き原発問題をテーマにすると言われたりしています。
ネロンガとガボラにみんな騙された!?

思い返せば前作「シン・ゴジラ」は、怪獣映画とよぶにはゴジラの登場シーンは少なく、政治家のおじさん達が顔をつき合わせて、政治と軍の問題や国際社会との緊張が流れる、大人向けのビターな内容でした。
先日公開された「ウルトラマントリガーエピソードZ」のように親子で観に行くと、とんでもない事になる作品ではないでしょうか?
はてな
ずばり、「シン・ウルトラマン」では移民、民族問題といった政治をテーマにした作品になるのでは?



みんなの予想を裏切り、「シン・ウルトラマン」は初代マンの物語を再現するのではなく、「ウルトラセブン」名作第42話「ノンマルトの使者」をオマージュするのではないか、という予想がまことしやかに言われています。

エヴァは「ウルトラセブン」のオマージュ?

庵野作品の独特なカット割は、実相寺昭雄監督の通称「実相寺アングル」がフルに用いられている事は、マニアには周知されています。

とくに、ウルトラセブンの第8話「狙われた街」の逆光のシーン。第43話「第四惑星の悪夢」の謎の奥行き。こうした芸術的技法はエヴァンゲリオンではお馴染みですよね。
実相寺アングル以外にもエヴァのなかでは、セブンをオマージュさせるものがあります。エヴァンゲリオンの2号機のカラーリングは赤です。2号機のパイロットである、アスカ・ラングレーは、序盤では優秀で強力なパイロットでした。
しかし、終盤にかけて、使徒からの度重なる攻撃により、傷つき追い込まれ、体がボロボロになった状態でした。それでも、最後まで戦い続けようとする姿は、「ウルトラセブン」の最終回までの流れをなぞっていると思える展開です。
しかも、「シン・ウルトラマン」が成田亨の原画をもとにデザインされたように、アスカは「シン・エヴァンゲリオン」において、「ウルトラセブン」の初期案にある白に青いラインの入ったプラグスーツを着用しているのです。
そして、エヴァで磔にされている「リリス」とよばれる謎の巨人の形が、「ウルトラセブン」の第39・40話の「セブン暗殺計画」の磔にされたセブンの形に似ているところがあります。
次にエヴァの度重なる切断描写です。この切断技といえば、「ウルトラセブン」のアイスラッガーによって怪獣や宇宙人が真っ二つになって、体液を撒き散らしながら倒れるヤバいシーンがよく見られますよね。


「ウルトラサイン」とは、「ウルトラマンA」以降から使われている、ウルトラ兄弟の連絡手段の技です。庵野秀明氏は、「ウルトラサイン」をエヴァの作中にこっそり使っていたり、会社のロゴもそれっぽいですね。しかも、会社のタイトルロゴが表記される効果音には「帰ってきたウルトラマン」の変身する音が用いられています。

昭和に放送されたウルトラマンには、大きく3つのシリーズに分かれます。1つ目は、ウルトラQ、初代マン、セブンと1965年〜1968年にかけて放送されたものを、昭和第1期ウルトラシリーズとよびます。次に、1970年以降、帰ってきたウルトラマン、エース、タロウ、レオと放送されたものを、昭和第2期ウルトラシリーズとよびます。昭和第3期はウルトラマン80、ザ・ウルトラマン(アニメ作品)などです。
「リリス」の磔についても、「ウルトラマンA」の第13「死刑!ウルトラ5兄弟」、14話「銀河に散った5つの星」のゴルゴダの丘の磔にされているウルトラ兄弟と見ることもできます。
切断についても「ウルトラマンA」がギロチン王子というネットスラングがあります。
ということは、庵野秀明はどちらかというと第2期ウルトラシリーズよりのファンである可能性もいなめません。
ただし、昭和第2期ウルトラシリーズは、やはり「ウルトラセブン」の影響がかなり強いのはファンならわかる話です。引き続き冬木透氏の「ウルトラセブン」のBGMが用いられ、作品の世界観は「ウルトラセブン」で築かれた防衛チームの組織体系を引き継いでいます。
ということは、「シン・ウルトラマン」を考えるには…
ウルトラセブンの存在がなくてならないのですな。
移民をテーマにした究極の傑作回「ノンマルトの使者」
では、庵野秀明は「ノンマルトの使者」を「シン・ウルトラマン」にて、どのような物語としてオマージュするかです。
まずは、「ノンマルトの使者」のあらすじを簡単に説明するぞ。
モロボシダンとアンヌは、休暇中浜辺で過ごしていると「真一」と名乗る謎少年が現れた。
真一は「海底開発を辞めさせないとノンマルトが怒り報復を受けるぞ!」と言う。
その瞬間、目の前で海底基地が大爆発を起こす。「ノンマルト」という言葉にモロボシダンは困惑する。
ウルトラセブンの故郷M78星雲ではノンマルトとは地球人を指す言葉だったからだ。
ノンマルトは人間ではない!?ノンマルトの送り出した蛸怪獣ガイロスとグローリア号との戦いの後、キリヤマ隊長たちはノンマルトの海底都市を発見する。
キリヤマ隊長は真一の言った通り、「我々人間より先に地球人がいたなんてそんな馬鹿な!」と、宇宙人の侵略基地として攻撃を命令する。
海底都市はハイドランジャーの魚雷で徹底的に破壊された。
「ウルトラ警備隊全員に告ぐ!ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々のものだ!」(キリヤマ)


同じように、「ウルトラセブン」では地球の先住民では?というもやもやするストーリーは、「地底GO!GO!GO!」にて謎の地底都市などが出てきます。
このノンマルトの悲劇は、平成セブンのストーリーに大きなテーマが引き継がれ、暗い影を落とし、他のウルトラマンシリーズにおいても80やマックスにおいて、地底に先住民が住んでいる事がわかり、友好と共存が語られます。
ちなみに、この「ノンマルトの使者」について語るものは世の中に星の数ほどあり、いまさら語ることもないのですが…脚本を手がけた金城哲夫は沖縄出身であり、幼い頃に太平洋戦争末期の沖縄戦を経験しています。沖縄は、セブン放映時まだアメリカの占領下にあった事から、琉球民族に対する差別や米軍基地の問題等、沖縄人としての様々な葛藤がこの物語に含まれているのではないかとファンの間で口々に言われています。
「ウルトラセブン」の物語で、セブンファン以外にも、広く話題となる「ノンマルトの使者」ではありますが、こうした巷に広まる解釈を大きくひっくり返してしまう、事実があるのですが…それについては、後に本編を語るまでにとっておくことにしましょう。
「あなたは、外星人なの、それとも人間なの?」
長澤まさみ演じる分析官浅見弘子の声は、初代ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」に登場したメフィラス星人の「お前は宇宙人なのか、人間なのか」をオマージュしたものであると、ピンときた方は多いはず。
メフィラス星人は、特報にも出てきたザラブ星人を配下に登場させたボス的存在であり、他にもケムール人、バルタン星人を出現させました。
偶然の一致ではありますが、メフィラスの配下の宇宙人達は、暴力による地球侵略ではなく、人間の心に漬け込み、信頼関係を壊して、共倒れ誘う事で侵略を企む宇宙人でした。
早見あかり演じる船縁由美は、「禍特対(かとくたい)」について「霞ヶ関の紅蓮隊」と称していたように、「シン・ゴジラ」同様に、ゴリゴリにリアルな政治を物語に取り入れようとしているので、移民という政治的な問題は自然とつながってくるのではないでしょうか。
公式サイトにあるテーマ「空想と浪漫。そして、友情。」の「友情」とはおそらく、ウルトラマンと人間の関係を指すのでしょう。初代マンはメフィラス星人に「お前は宇宙人なのか、人間なのか」と尋ねられて「両方さ」とあっさり答えましたが、「シン・ウルトラマン」では宇宙人と人間の間で葛藤する「ウルトラセブン」を再現すると考えられます。




いずれにしても、株式会社カラーが間に立つ形で、円谷プロが東宝より映画が配給されるのは実に数十年ぶりであり、「シン・ウルトラマン」は記念すべき作品なのです。