リテイク版【ウルトラセブン|第8話|狙われた街】未公開シーンが発掘されたとは?

YouTubeでしか語っていない部分があります

 

あらすじ

巷では突然発狂して暴力的になる事件が多発していた。

モロボシダンは、事件を起こした人々は北川町でタバコを買っている共通点に気づく。

タバコの中には、敵のアジトを突き止めた、ダンの目の前に、宇宙人が現れる。

この作品は、実相寺昭雄監督の名作。でも、脚本は佐々木守さんという、ウルトラマンで「故郷は地球」とか「怪獣墓場」とか、いつもコンビを組んでいた社会派の作家さんではなくて、金城哲夫さんなんです…

 

でも、あのダウンタウンの松本人志も好きな、最後のナレーション部分は金城さんは…

「例えば、水や空気に、赤い結晶体が流し込まれたとしたら…それは30億人の全人類が互いに敵視し、地球が自滅する時なのです」

 

という、モヤッとしたウルトラQみたいな終わり方だったんですよね。つまり、ラストは実相寺監督が書き直したらしいです。あと、このメトロン星人は、めっちゃ有名な宇宙人なんですけど、撮影の時までペトロ星人という別の名前があったとか。

最後のセブンとメトロン星人が戦う夕焼けのシーンなんですけど…大木淳さんという特撮監督が担当して、欠番となった「遊星から愛をこめて」もあわせて、夕日を好んで撮る監督でした。実相寺昭雄監督とは、名コンビで、帝都物語やウルトラQザ・ムービーに参加しています。

96年に亡くなってしまうのですが、ウルトラマンティガの実相寺監督回にタイトルクレジットに名前があって、実相寺さんの愛を感じます。

 

その45 第8話の発掘された未公開シーン

敵のアジトをつかんだ、ダンとアンヌ…古ぼけたアパートにたどり着きます。

 

ちゃぶ台を挟んで、メトロン星人とダンの会話するシーンは、いまだにCMなどで使われたり、世間にもよく知られる超有名なシーンですな。

https://twitter.com/19690814T/status/833876555260583936?s=20&t=fV15AWdC6uwECQYNdlLhvg

後の世間の反響とは裏腹に、宇宙人とちゃぶ台という斬新な演出は、海外に売り出すために、日本の生活風景を撮らない、初代マンから続く暗黙のルールを破る、反則行為とテレビ局側に受け取られたのでした。結局、プロデューサーの怒りを買ってしまった実相寺昭雄は、京都の撮影所に飛ばされて、セブン撮影からしばらく遠のく結果となってしまったのは、これまた、ファンの間で有名な逸話ですね。

 

さすがに京都までとばされるのはヤバいですな。

 

本当は、実相寺はもともとメトロン星人のアジトを、古ぼけたアパートではなく、「円筒形のビル」をイメージして、「遊星から愛をこめて」のような風変わりな、建物をアジトにする予定でいたみたいですね。

 

もしそうだとしたら、あのちゃぶ台の名場面は生まれず、実相寺昭雄は京都にとばされなかったのですかな?

 

さてどうなったでしょうね?

 

クライマックスでは、アパートが二つに割れて、中から宇宙船がせり上がり発進します。目撃したアンヌは、ビデオシーバーで本部に連絡します。じつは、このシーンの前に、カットされていた未公開映像が、近年、発見されたのは、ご存知ですか?

なんと、シナリオだけではなく映像が発掘されたのですか?貴重な事ですな。

 

映像では、追跡するために乗っていたタクシーの運転手が串団子を頬張りながら、「何かはじまるんですか?」と緊張するアンヌの隣で、見物を決め込むシュールなシーンが観られます。さらにシナリオ上では、宇宙船が発進しようとした時に、干してあった洗濯物がひらひらと運転手の顔に落ちてきて、悲鳴を上げて逃げ出すというギャグ満載の展開だったのですが…

 

もし、そんなシーンが本編にあれば、作品全体の印象がまた変わったかもしれませんな。

 

その46 アンヌの叔父の家は、有名●●のものだった。

物語の冒頭、マスク姿で下校する小学生の姿は、コロナ渦の、いまの時代と重なりますな。

 

「弘ちゃん!お父様が大変よ!早く乗って!」

 

アンヌの叔父はパイロットでした。しかし、叔父の操縦する飛行機が墜落してしまう、悲惨な事故が起こり、アンヌは息子の弘に涙ながらに伝えます。

 

「お父様の飛行機がね…お父様の飛行機がね…」

 

と泣きながら伝えるシーン…じつはアンヌ役のひし美ゆり子さんにとって、女優として初体験の泣く演技だったために、涙がなかなか出ずに、本当に泣きたくなったと告白されています。

 

そんな、初々しい演技だったのですな。

 

ダンとアンヌが捜査のため、アンヌの亡くなった叔父の家を訪れるシーン…

 

典型的な逆光と影を使った実相寺アングルですな…

 

この撮影が行われた場所が結構すごくて…なんと「宮本武蔵」で知られる文豪の吉川英治が、かつて住んでいたお屋敷でのロケでした。美しい庭園を見て実相寺昭雄は「折角の綺麗な庭だから、引き戸を開けて撮ろうよ」と指示をだして、庭の明かりを逆光に使い、この映像が完成したのでした。

文豪の吉川英治…最近では、井上雄彦のマンガ「バガボンド」の原作者と言った方が伝わりやすいですかな?

 

その47 天才ゆえの孤独実相寺昭雄…

このような、通称「実相寺アングル」とよばれる独特な撮影方法は、後に庵野秀明と樋口真嗣に継承され、エヴァを産み、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンと…日本エンタメを代表する撮影技法に発展していくわけですが…まあ、ウルトラを撮っている時は、円谷英二に気に入られながらも、変なアングルからの撮影に周囲からの理解はなかなか得られず、癖の強い監督に思われていました。ベテランカメラマンでさえ面食らってしまい、「狙われた街」の撮影はクランクインから、難航したようです。

 

天才ゆえの孤独ですな。

 

実相寺アングルとよばれる撮影法は、前になめものを置いた極端な遠近法や逆光の演出は、セットや役者の演技の粗が目立たないようにするために、撮影するために誕生したとも言われます。

実相寺アングルの撮影は、役者の演技に左右されない、監督が自分の意志で現場をコントロールして撮影できるスタイルともいえます。

 

 

まさに、役者泣かせですな。しかし、なぜそんな極端な撮影法を用いようとしたのですかな?

 

実相寺は自身の作品に強いこだわりをもち、時には特撮班にも注文をつけて、宇宙人のデザイン変更を要求することもあったとか…

 

欠番となった、例の回での話ですな…

 

実相寺については、出演者からは、いつもカメラを覗いている印象が強いと言われるほど…つねにカメラ位置やアングルなど、細かく計算して撮影にのぞむ監督だったようです。

実相寺監督は、早稲田大学出身で、しかもフランス語が堪能で、国家試験に合格して、外務省の官僚となった後に、な・ぜ・か、ラジオとテレビ局の社員となった異色の経歴をもつ、秀才ですね。

実相寺アングルや実相寺作品の世界観には、ゴダールとかフランス映画にルーツがありそうですな…

 

さらには、撮影中にカメラマンが映画撮影に引き抜かれて、交代というまさかの事態が起きて、打ち合わせ、打ち合わせで、「狙われた街」の撮影は思い通りに進まなかったそうです…

 

アンヌの役も同じく、映画撮影に引き抜かれてしまったので、まだまだ、当時はテレビに比べていかに映画界が強い時代であったかわかりますな。

 

映画界はちょうどこの時期をピークに、斜陽をむかえていくわけですが…テレビは「電気紙芝居」とバカにされていました。しかし、これからテレビの時代が来ると考えて、すでに飽和状態であった映画監督に見切りをつけて、テレビ番組の監督に転向する頭のいい、後に巨匠となる監督たちがウルトラの初期を支えたといわれます。そのなかに実相寺昭雄もいたわけですが、どうしても映画的思考が強いせいか…「美空ひばり事件」のような、テレビの常識破りをしてしまう実相寺の世界観は、様々なトラブルを引き起こしてしまいました。

 

それでも、実相寺昭雄本人の性格は打たれ強く、叱られても「頑張ります」と笑って流せる強靭なメンタルの持ち主だったそうですな…実相寺昭雄を取り巻く人間模様については、桜井浩子さんがYouTubeでいろいろとお話していますな。

「狙われた街」の撮影では、アフレコで聞こえないですが、メトロン星人のちゃぶ台シーンでは、監督自身は面白すぎて爆笑していたとか…いなかったとか…一方で、モロボシダン役の森次晃嗣さんは、着ぐるみの中の人が苦しくならないように、仕事が早く終わるように気を使っていたとか…

 

名場面の裏に、それぞれの思いが錯綜していたのですな。

 

【ウルトラセブン|第8話|狙われた街】庵野秀明・松本人志など、赤い結晶に犯された文化人とは?

庵野秀明や樋口真嗣、「ダウンタウン」の松本人志といった、日本を代表するクリエイター達に影響を与えた、ウルトラセブン第8話「狙われた街」の監督実相寺昭雄。「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」の撮影法の由来する「実相寺アングル」を徹底解説!

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という実相寺昭雄監督の話なんですが…また、セブン末期に戻ってきた時には初期とは違った問題が起こったそうです。追々語ってまいりますので…日曜日の配信もお楽しみに!

 

次回は第9話「アンドロイド0指令」ですな。

 

「アンドロイド0指令」はウルトラセブンの映像のある特徴が、よくわかる作品ですね。実相寺昭雄の知名度の高さゆえに、セブンには、ある誤解が生まれてしまっているので、ぜひ観てもらいたいです!お楽しみに!